突然、身内が自宅で亡くなり、その高額な特殊清掃や遺品整理などの費用について「相続放棄すれば払わなくても済むのでは?」と思われていますよね。
もちろん相続放棄すれば、特殊清掃業者や遺品整理業者への支払う義務はありませんが、不用意な相続放棄は禁物です。
その禁物な理由は、もしかしたら莫大なプラス遺産も相続放棄してしまう可能性があるからです。
そこで、この記事では、孤独死でお困りの相続人のために、相続放棄と特殊清掃を民法との関連を踏まえて、最もメリットがある費用負担の回避方法を詳しく徹底解説します。
目次
相続人が特殊清掃の費用負担を回避できる方法
まずは、身内の孤独死などで特殊清掃や遺品整理が必要になった場合、相続人がその費用負担を民法的に回避できる方法は、下記2つがあります。
- 相続放棄 ※単純承認しない意味
- 限定承認
❶ 相続放棄について
遺産の相続放棄とは、相続人が亡くなった親族のプラス財産もマイナス財産も引継ぐことを一切放棄することで、一度相続放棄したら撤回できません。
代表的なプラス財産
- 現金・タンス預金
- 預貯金や定期預金、株券などの金融資産
- 土地や建物などの不動産
- 換価分割できる残置物
代表的なマイナス財産
- 孤独死清掃や遺品整理の費用
- 信託銀行や消費者金融などの借金
相続放棄しないと…
相続放棄と真逆が、単純承認になり、特殊清掃や遺品整理の費用などを含むマイナス財産(負債義務)も全て引継ぐことになります。
・自筆証書遺言
・秘密証書遺言
・公正証書遺言
相続放棄には期限がある
この相続財産の放棄手続きは、相続開始(被相続人が死亡したこと)を承知した日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申立てなければなりません。
この期間を過ぎると、単純承認(通常相続)をしたものとみなされ、プラス財産もマイナス財産も引継ぐことになり、撤回できません。
3ヶ月以内に相続放棄の申立てすべき
特に、賃貸物件での孤独死は、そのままにしておくと、その特殊清掃や遺品整理などの直接的な支払い義務が生じるわけです。
そのため、直接支出を回避するには、まずは3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申立てをしましょう。
❷ 限定承認について
選任された相続財産管理人や後見人により、プラス財産よりマイナス財産が明らかに多いと判明した場合は、すぐに相続放棄すればよいです。
しかし、どちらが多いか詳しくわからないケースもあります。そんな時に利用すべき相続制度が、限定承認になります。
限定承認とは、相続財産のマイナスとプラスを相殺し、マイナスが多い場合は、相続人による支払いや返済を回避できる制度です。
この限定承認の手続きも、相続開始(被相続人が死亡したこと)を承知した日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申立てなければなりません。
間接的に支出することになる
プラス財産とマイナス財産を相殺した結果、プラス財産が残れば相続人のものになります。
もちろんマイナス財産の中には、孤独死の特殊清掃費用も含まれているので、相続人が直接支払う義務はありません。
でも孤独死に関連する費用は、本来の相続財産から差し引かれますので、結局は間接的には支払うことになりますが…。
またマイナス財産が多いと、特殊清掃費用の負担は全くありませんが、遺産相続した財産全体もマイナスなので、相続財産が手元に残ることはありません。
相続放棄と限定承認の違いについての詳細
他社様の制作になりますが、相続放棄と限定承認の大きな違いについて、非常に分かりやすく説明されている動画がありましたので、紹介しておきますね。
安易な相続放棄は莫大な遺産を失うかも
次に、相続放棄に関するリスクと限定承認のデメリットについて、詳しく説明します。
相続放棄は簡単で安価にできる
相続放棄は、自分で家庭裁判所に出向いて行えば、下記の流れで、簡単な書類作成と安価な費用でできます。
- 相続放棄にかかる費用を準備
- 相続放棄に必要な書類を用意
- 家庭裁判所に相続放棄を申立てる
- 相続放棄申立後に照会書が届く
- 相続放棄申述受理通知書が届く
必要書類 |
相続放棄申述書 ※ダウンロード可能 |
被相続人(孤独死した人)の住民票除票/戸籍附票 | |
申立てる人(あなた)の戸籍謄本 |
費用 |
【印紙代】 800円 |
【切手】 500円程度 | |
【被相続人(孤独死した人)の住民票除票/戸籍附票】 300円程度 | |
【申立てる人(あなた)の戸籍謄本】 750円 | |
合計 | 概ね3,000円〜5,000円 |
【注意】プラス財産の相続も放棄することに
比較的手続きが簡単で安価にできるため、特殊清掃費用を払いたくない一心での安易な相続放棄はおすすめできません。
その理由は、孤独死した故人には、あなたが知らない多額な財産があるかもしれないからです。
「いやいやそんな財産ないから大丈夫!」と思っている親族ほど、さらに気を付けてください。
実は、我が家も母親が亡くなった際に、同居していた父親も兄も知らない預金や金融商品が○千万分もあると判明しました。
限定承認を選ばれるのが賢明
犬猿の仲だった身内や普段あまり交流がなかった親族の場合は、どんなケースでも安易に相続放棄すべきではありません。
実は、あなたが知らないだけで、多額な預貯金や好立地な不動産を所有なんてことは、よくあるケースですからね。
特に、孤独死するほどの疎遠だった身内の場合は、限定承認を選び、しっかりと財産調査をしたうえで、相続手続きをされるとよいでしょう。
限定承認のデメリット
- 法定相続人全員の承認が必要
- 手続きが複雑かつ長い期間を要する
- 遺産が値上がりした際は相続税が掛かることも
❶と❷の手間や労力を考慮すると、手数料が発生しますが、なるべく弁護士や税理士、行政書士等に限定承認の手続きを依頼されるほうが、得策でしょう。
相続放棄するなら遺品整理してはいけない
相続に関する民法では、僅かでも遺品整理をしてしまった後に、マイナス財産が多いと判明しても、相続放棄や限定承認ができない制度になっています。
遺品整理を行う=単純承認を選択
遺品整理をすると、故人の財産を処分したものとされ、その行為が単純承認に該当し、のちに相続放棄や限定承認を選択できなくなる可能性があります。
その根拠については、下記にコピペした民法の条文です。
第921条(法定単純承認)
次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
1相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
遺品整理が、この条文の「相続財産の全部又は一部を処分したとき」に、該当するわけですね。
形見分けもしない方が良い
思い出の品や写真などの資産価値がない遺品を形見分けするような遺品整理なら、単純承認したことにはならないようです。
しかし、他の相続人との関係性によっては、資産価値がない形見でも100円ぐらいの価値はあると言い出し、それが裁判所で認定されれば、相続放棄できなくなります。
そのため、念には念を入れて、どんなに資産価値がないと思われる遺品でも勝手に形見分けされないほうが良いでしょう。
例外的に孤独死の遺品整理ならOK?
明確な法的根拠はないのですが、死因不明の孤独死やゴミ屋敷で亡くなり相続開始になった場合は、特殊なケースとして、遺品整理後でも相続放棄を選択できるようです。
その理由は、遺体からの臭いや大量なゴミによる悪臭や虫の発生などによって、既に近隣住民に悪影響を与えているからです。
少しでも早くその近隣問題を解消するには、早急に特殊清掃や遺品整理を行う必要がありますからね。
孤独死現場の消臭や片付けに掛かる料金目安
人がお亡くなりになった部屋の消臭や消毒に掛かる特殊清掃費用の目安表を提示しています。
他の特殊清掃業者のように最低額の目安だけではなく、これ以上掛からない上限金額も分かるよう明示にしています。
特殊清掃の料金目安表
腐敗体液除去 汚染物撤去 |
27,500円〜220,000円 |
害虫駆除 | 16,500円〜55,000円 |
消臭/消毒/除菌 | 16,500円〜275,000円 |
最大総額 | 60,500円〜550,000円 |
解体工事と原状回復の費用は、上記目安金額に含まれていませんが、訪問見積もり後に詳細金額の提示は可能です。
【オプション】オゾン脱臭
オゾン脱臭の条件 | 特殊清掃の完了後に、壁紙や床/床下に原因不明の臭いが残る箇所があり、お客さまからオゾン脱臭を依頼された場合のみ |
費用相場 | 165,000円/日 |
さらに、同時にほとんど必須になる故人の遺品整理費用についても実際に掛かる相場金額も提示しておきます。
形見分けとして貴重品や思い出の品やアルバムなどの捜索や仕分け、梱包などの人件費、粗大ごみや残置物を引き取り費用も下表金額に含まれています。
遺品整理の費用相場表
ワンルーム | 33,000円〜165,000円 |
1DK | 33,000円〜198,000円 |
1LDK/2DK | 55,000円〜412,000円 |
2LDK/3DK | 99,000円〜693,000円 |
3LDK/4DK | 131,000円〜1,122,000円 |
4LDK/5DK | 165,000円〜1,320,000円 |
- 仏壇や位牌・犬猫の大量な糞尿などの処分困難な残置物は別料金
- リサイクル・リユースできる家財道具や家電があれば上記金額よりも低くなる
- ゴミ屋敷などの不用品回収量が多大な場合は相場金額以上になることもある
当サイトでは、特殊清掃を行った不動産(賃貸物件は除く)の買取手配も事前に頼むことができます。
実際に掛かった特殊清掃の料金や金額が不透明になる理由、ボッタクリ被害に遭わない秘訣などについては「特殊清掃料金について」で、詳しく解説しています。
【まとめ】相続放棄は財産調査してから行う
身内が孤独死で亡くなった際に掛かる特殊清掃や遺品整理などの費用負担を回避できる方法2つと注意点、デメリットを解説しましたが、ご理解されましたでしょうか。
相続放棄と限定承認のどちらを選ぶにしても、まずは故人の財産を調査することが、先決です。
遺産全体でプラスなのかマイナスなのかが把握できないと、相続方法を決めようがありませんからね。