孤独死や自殺などの遺体現場は、だれかが清掃しなければなりません。そのまま放置しておくと、公衆道徳的にも衛生的にもよくありませんからね。
実は、近年では、そんな遺体現場を専門に清掃する「特殊清掃」という業者が登場してきています。
そこで、まずは私たちが行なった遺体現場の清掃事例とその専門業者の存在と料金目安などを詳しくお伝えします。ぜひ参考にしてください。
リストカットによる遺体現場の清掃事例
私たちに遺体現場清掃の依頼電話が入ったので現場の東五反田まで急行しました。そこで会ったのは、今にも倒れそうほど憔悴しきった初老女性でした。
私が「〇〇さんですか?」と声を掛けると、小声で「はい」と一言だけで、そのあとは沈黙のまま部屋まで案内されました。
部屋に入って「どちらに亡くなられたのでしょうか?」と尋ねると、目の前のトイレドアに指を刺されたので、開けて見ると、上記写真の様な便器内が赤く染まった光景が目に入ってきました。
トイレ内でのリストカットによる自殺だったとのことでした。タンクにも血糊が付いているので、途中で苦しまれた感じでした。
依頼者の話によると、娘さんは大手企業でバリバリに活躍していたキャリアウーマンだったらしいですが、数年前から人間関係というかパワハラで悩んでおられた様です。
夫は既に他界していて、娘さんの住まいが近かったため、月に1度〜2度は一緒に食事などをされて、様子を伺っていたとのことでした。それにも関わらず、こんなことになって心底悔やまれている様でした。
遺体現場の清掃自体は、冬場でもあったし自殺した翌日に発見されたので、匂いもほぼ発生しておらず1時間程度で完了しました。綺麗になったトイレを見られて、ポツンと下記の言葉を言われました。
「本当にありがとうございました。でも一人娘も夫も亡くして、これからは何を生き甲斐にしていけばいいのでしょう?」
無論、私はその言葉に何も返すことができず、ただ沈黙するだけでした。「いくら仲の良い親子でも心の奥底までは誰も分からないものなのだな」と、自分に言い聞かせる私がいました。
遺体現場の清掃は特殊清掃の専門業者に相談すべき
公共の場ではなく私的な場所で亡くなった、つまり部屋の中で亡くなった場合は、通常のハウスクリーニング業者ではなく、必ず「特殊清掃」の専門業者に清掃を依頼しましょう。
なぜならば、通常の消臭方法では決して死臭を消臭することができないからです。
特殊清掃とは
遺体部屋の清掃のことを業界用語で「特殊清掃」と呼ばれています。
近年は一人暮らしの老若男女が増えているため、それに比例して孤独死などで、部屋に遺体が放置されるケースが増加しており、特殊清掃の重要度が増しています。
特殊清掃の主な目的は死臭の消臭
その内容は、遺体の腐敗体液から発生する強烈な死臭を消臭するための作業ノウハウや専用消臭剤等を駆使して遺体部屋の清掃を行なっています。
市販の消臭剤では、どんなに大量に噴霧してもほぼ100%死臭が残ってしまいます。また死臭消臭には不可欠な遺品整理のノウハウも熟知しています。
さらに、詳しく特殊清掃業者について知りたい人は「コロナ渦で依頼が急増している特殊清掃の実態と現場レポート」で、お伝えしています。
遺体現場清掃は専門業者に任せたほうがよい
このように遺体現場清掃の専門である特殊清掃業者に依頼しないと、必ずといっていいほど死臭が部屋に残ってしまいます。
そうなると不動産管理会社や近所とのトラブルになり、余計な手間や費用が掛かってしまう可能性が高くなるので、必ず遺体部屋の清掃は特殊清掃業者に相談されることを強くおススメします。
遺体現場清掃の料金目安
この項目では、遺体現場清掃に必須となる「特殊清掃」と「遺品整理」の料金目安についてお伝えします。
特殊清掃の料金目安
道路や鉄道、市街地等の公共場所
料金目安:基本的に無料。
ただし稀ですが、相続人に遺体現場清掃の料金を請求されることがあるようです。申し訳ないですが、その違いの理由は不明です。
居間やトイレ、風呂場等の私的な場所
特殊清掃 | 55,000円~500,000円(税別) |
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- 遺体発見までの日数や亡くなった箇所、腐乱状態等によってどうしても金額に大きな幅があることはご了承ください
- 原状回復リフォーム費用は含まれていません
- 家具の処分などの遺品整理料金は含まれていません
特殊清掃料金の内訳
腐敗体液 汚物撤去 | 25,000円~200,000円 |
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害虫駆除 | 15,000円~50,000円 |
消臭消毒 | 15,000円~250,000円 |
遺品整理の料金目安
ワンルーム | 30,000円~150,000円 |
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1DK | 30,000円~180,000円 |
1LDK・2DK | 50,000円~375,000円 |
2LDK・3DK | 90,000円~630,000円 |
3LDK・4DK | 120,000円~1,020,000円 |
4LDK・5DK | 150,000円~1,200,000円 |
上記金額はあくまでも目安です。お部屋の状態や遺品の量、思い出の品の捜索や一日完了のご要望などによって、上記範囲を超えることもあります。
遺体現場の清掃料金の総額
死臭消臭 特殊清掃+遺品整理 | 85,000円~1,700,000円 (消費税別) |
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激安業者を選ぶことのリスクやデメリット
- 死臭が残っている
- 追加でリフォーム費用を請求される
- 遺族の感情を全く考慮していない
- 消臭の再施工に対応していない
- 近所迷惑な作業をする
基本的な遺体現場の清掃方法
この項目では、居室等で亡くなった場合に私たちが行なっている基本的な遺体現場の清掃方法を手順を追ってお伝えしています。
【手順①】害虫駆除
はじめに、ゴキブリやハエ、ウジ虫等の害虫駆除を行ないます。その理由は、死臭の元である腐敗体液を拡散させないためです。
そのままにしておくと、害虫がいたるところを動き回り、腐敗体液を拡散させることになります。
【手順②】死臭発生元の搬出
畳やフトン等の腐敗体液が付着した物を搬出します。この搬出で部屋全体に広まっている死臭の約60%〜80%は消臭できます。
搬出の際は、床や壁などに腐敗体液を付着させないようにしないと、死臭を拡散させることになります。
【手順③】腐敗体液の洗浄
床や壁の表面は、雑巾等で拭き取ります。敷居や壁際等の隙間に溜まった腐敗体液は、ブラシ等で掻き出します。
僅かでも残っていると、強烈な死臭を発生させますので、細心の注意を払いながら、腐敗体液が付着した箇所を洗浄します。
【手順④】該当箇所の消臭剤の噴霧
腐敗体液が付着していた箇所を遺体現場清掃専用の消臭剤を噴霧して消臭処理をします。
該当箇所より広めに噴霧すると、より消臭効果が高まります。
【手順⑤】消臭確認
臭い測定器などの機器を使用して消臭確認をしている業者もいるようですが、本当に微量の臭いは数値化できないと、私たちは多くの現場経験から感じています。
そこで、私たちは自分の鼻を近づけて死臭の消臭確認をしています。
【手順⑥】該当箇所の消毒剤の噴霧
例え消臭確認ができても、そこに死臭を発生させる細菌が残っていたら、時間の経過とともに再び、死臭を発生させる恐れがあります。
そのため、私たちは消臭確認ができても、必ず遺体現場専用の消毒剤の噴霧を行なっています。
【手順⑦】遺品整理後、遺品を搬出
腐敗体液が付着した箇所だけを消臭消毒しても部屋から死臭が消えるわけではありません。
なぜならば、家具や家電製品などの遺品にも死臭が移っていることがあるからです。
遺体現場の清掃には、遺品整理とその搬出が必要不可欠と言っても過言ではありません。
【手順⑧】簡単な清掃
遺品と同様に部屋のホコリにも死臭が付いていますので、必ずハタキなどで、照明の笠や長押、窓枠、クモの巣等のホコリを取り除きます。
【手順⑨】部屋全体の消臭剤の噴霧
遺品やホコリだけでなく、壁や天井にも死臭は染み付いています。
そのため床はもちろんのこと、壁や天井などの部屋全体に消臭剤を噴霧します。
死臭の広がり程度によっては、該当部屋でないキッチンやフロ場、トイレにも消臭剤を噴霧することもあります。
【手順⑩】部屋全体の消毒剤の噴霧
消臭剤と同様の理由で、床はもちろんのこと、壁や天井などの部屋全体に消毒剤を噴霧します。
【手順⑪】再度、消臭確認
この段階では、ほぼ死臭が消臭され遺体現場の清掃は完了しているが、最終確認のためできる限り、鼻を近づけて消臭確認を行ないます。
万が一 死臭が残っている場合は、再度消臭剤の噴霧を行い再び消臭確認を行ないます。
失敗しない特殊清掃業者の選び方
最後に特殊清掃業者選びで失敗しないために避けるべき業者の特徴を5つほどお伝えしますね。
- 料金表に〇〇円~と書かれている業者は避ける
- ランキングサイトの上位業者は避ける
- リフォームに積極的な業者は避ける
- 一般業務用の消臭剤を使用している業者は避ける
- テレビ放映された業者は避ける
なぜ上記5つに当てはまる業者を避けるべきかの理由は「おすすめの特殊清掃業者|優良業者が見つかる選び方と料金相場」で、詳しくお伝えしていますのでご覧ください。
まとめ
遺体現場の清掃は特殊清掃業者に依頼すべき理由とその料金目安、具体的な清掃方法をお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか。
不幸にも遺体部屋を清掃しなければならないことになった場合は、必ず特殊清掃業者に相談されることをおススメします。