
特殊清掃とは、孤独死や自殺があった部屋に漂う死臭消臭や遺品整理をして片付け清掃する事です。
そんな部屋で仕事をする特殊清掃員のタブーとして、絶対にやってはいけない事と口にしてはいけない事があります。
そこで、2008年から特殊清掃業を営んでいる私から、特殊清掃員がしてはいけないタブーな行為5つを解説していますので、ぜひ知っておいてください。
特殊清掃員が絶対にしてはいけないタブー5つ
まずは、孤独死部屋が仕事場となる特殊清掃員ならではの、絶対にしてはいけないタブー5つを挙げてみました。
【タブー①】汚染物や遺品を乱暴に扱う
孤独死があった部屋にある家財道具(遺品)は、どれにも故人の様々な念や想いが残っています。
言い換えれば、腐敗体液が付着した汚染物や生活用品だった遺品などは、故人の分身みたいなものです。
よって、故人への尊厳を守るために、特殊清掃の作業中に、汚染物や遺品を足蹴にしたり、放り投げるなどの乱雑な行為は、厳禁です。
【タブー②】孤独死した人の個人情報を口外する
生きていない故人は、法的には個人情報保護法の対象外ですが、遺族の立場や故人への尊厳を守るために、下記のような個人情報はもちろんですが、それ以外の些細なことでも口外しません。
- 氏名
- 年齢/生年月日
- 住所/本籍地
- 職業/勤め先
- 預貯金の残高
- 借金の有無
- 生命保険の情報
- 基礎年金番号
- 趣味や趣向がわかる物
- 本人や家族/仲間との写真
- 手紙や請求書などの書類
【タブー③】特殊清掃の現場で笑い声を出す
遺族や関係者、依頼者がその場に居なくても、特殊清掃現場では、笑顔や笑い声は慎むようにしています。
その理由は、真摯に遺族や故人に寄り添う気持ちを忘れずに、死臭消臭や片付けを持続するためです。
もちろん、昼食や休憩などで、現場から離れている最中も、大声でバカ笑いなどは致しませんが、普通の会話で笑顔になるには構わないと思いますが…。
【タブー④】無断で死体現場写真を公開
SNSなどで誰でも写真や動画をネット上に公開できるようになった昨今では、常識になりつつありますが、一般個人には肖像権という権利があります。
肖像権とは、顔や姿態、プライバシー情報をみだりに「撮影」や「公表」されない権利で、法律で明文化されていませんが、判例で確立されています。
公共の場から撮影できる写真や動画は問題ありませんが、私的空間である死体があった室内写真は、無断でネット公開すると、肖像権侵害に該当します。
【タブー⑤】現金や貴金属などの金品を盗む
孤独死された人が所有していた物(遺品)は、死亡したその瞬間に相続人(遺族)へ所有権が移ります。
つまり、特殊清掃現場にある家財道具を含めてすべては、生存されている相続人(遺族)の所有物になります。
よって、特殊清掃の作業中に見つけた現金や貴金属など資産価値がある物をネコババすると、当然ですが、窃盗罪になります。
タブー?特殊清掃員のあるある体験談
孤独死や自殺があった部屋って、我々にとっては日常的なのですが、一般の人にはタブーでほぼ目にする事がないと思われますので、特殊清掃員のあるある体験談として紹介します。
【体験談①】包丁で腹部を刺してベッドで自殺?
上記写真には写っていませんが、手前に血が付いた包丁が落ちていました。
どんな心境で自殺をされたのかは分かりませんが、ベッドの上でうずくまって亡くなっていたようです。
【体験談②】多量の睡眠薬で眠るように死亡
遺族の人の話では、睡眠薬を多量に飲んでの自殺だったようです。
死後1ヶ月以上経過してから発見されたので、遺体はかなり腐敗が進んでいて、悪臭を放っていました。
【体験談③】得体の知れない幼虫が湧いていた
天涯孤独だったらしく自殺してから約半年後に、市職員の訪問活動によって発見されたようです。布団の上で、半分ミイラ化された遺体だったようです。
警察の鑑識が遺体を搬出する際に、遺体と布団がへばり付いていたため、布団も一緒に搬出した時に、その布団下には得体の知れない幼虫が湧いていたそうです。
よく見ると、その成虫も何匹かおり、遺体を捕食して成長したかと思うと、自分の身体が食べられているのを想像して思わず、ゾッとしてしまいますよね。
【体験談④】リストカット後、廊下で死亡
日頃から人間関係に悩みがあったようで、トイレでリストカットして自殺を図ったらしいです。
しかし、意識が朦朧とし始めて怖くなったからか、トイレから出て、廊下で彷徨いながら力尽きてしまったようです。
【体験談⑤】布団中で起きた突然死
亡くなった人の息子さんからの死臭清掃の依頼でした。上記写真でお分かりになるように就寝中に何らかの原因で突然死されたようです。
遺体の腐敗体液が人型に残っているので、あまり苦しまれることなく、亡くなったようですね。
この方の場合は、スリムな体系だったため腐敗体液が少なく布団を回収すると、ベッド下の床までは浸透していませんでした。
そのため、後は遺品整理をして部屋全体に消臭剤を散布するころで死臭はほぼ消えました。
因みに、ふくよかな体型の人が孤独死された場合は、床は勿論のこと床下や、最悪の場合は下階部屋の天井まで腐敗体液が流れていることはあります。
【体験談⑥】トイレで起きたショック死
アパートの大家さんからの死臭清掃の依頼でした。故人には全く身寄りがいなくて、大家さんご自身で原状回復をされるとのことでした。
警察からは死後1ヶ月程度経過していると言われたようですが、私たちの経験ではもう少し長い期間経過しているように感じました。
まずは、固まった腐敗体液を薬で溶かし取り除いていきます。特に排水溝の隙間や角になっている箇所に付着している腐敗体液を徹底的に洗浄します。
その後、該当箇所近くまで鼻を近づけて死臭の元である腐敗体液の有無を確認し専用の消臭剤を散布します。まだ死臭が残っている場合はこの作業を消えるまで繰り返します。
【体験談⑦】風呂場で起きた孤独な溺死
入浴中に持病の発作を起こし、亡くなられたようです。バスタブの水はドス黒く変色していましたが、まだゼラチン化されていなかったので、そのまま排水することができました。
もしもゼラチン化されていれば、排水栓を抜いても詰まるだけですので、バケツなどを使って手作業で取り除くことになります。
この現場では、バスタブ以外の箇所にほとんど腐敗体液の付着が無かったため、バスタブと排水管を徹底的に清掃することで、9割以上の死臭を消臭することができました。
後は、浴室内全体に死臭専用の消臭剤を散布して、ほぼ100%消臭することができました。
特殊清掃現場のリアルな写真集
多くの人がタブー視して、目を背けてしまう孤独死現場のリアルさが分かる写真を集めてみましたので、ご覧ください。
特殊清掃員になれば、毎日のように、こんな部屋で仕事をする事になります。
【現場写真①】マンションでの孤独死
苦しかったためか、布団からはみ出て亡くなられていました。
髪の毛や吐血などの汚物が大量に残っていたのが、リアルにそこに死体があったことを印象付けます。
特殊清掃の仕事内容としては、下記3つを行いました。
- 床や桟に付着した腐敗体液と髪の毛の除去
- 布団一式の撤去
- 部屋全体に消臭除菌剤の噴霧
【現場写真②】布団の中
実際に孤独死が起こった部屋の様子。亡くなってから時間が経過したため、布団の上に人型になって体液がくっきり残っている。
【現場写真③】就寝中に襲われた突然死
恵まれた生活環境ではなかったようで、故人は生活保護を受けられている男性でした。
黒い腐敗体液の中では、肉片らしき物体もあり、こびりつく腐臭がひどく凄惨な汚染状態でした。
プチゴミ屋敷の部屋でしたが、テレビや冷蔵庫などもなく、かなり質素な生活をされていたようです。
【現場写真④】死後1か月で発見された自殺?
眠るように亡くなられたようで、ベッドの上には、就寝中の体勢がそのまま、腐敗体液の跡となって残っており、臭気が漂っていました。
不幸中の幸いと言っていいのか、腐敗体液は床のフローリングまで汚染されておりませんでした。
因みに、写真には写っていませんが、リユース・リサイクルできる遺品は、買い取り回収させて頂きました。
【現場写真⑤】トイレでオーバーシュート死?
トイレでお亡くなりになる原因の一つとして、オーバーシュートが高い割合を占めています。
オーバーシュートとは
トイレでいきむ事や立ち上がる際の急激な血圧、心拍数の上昇により心筋梗塞や脳卒中を引き起こしてしまう症状です。
【現場写真⑥】廊下で原因不明の突然死
死因は不明ですが、廊下で倒れてそのまま亡くなられたようです。遺体は、警察が引き取っているのでありませんが、この写真をみれば、遺体がどのような状態だったかがわかります。
参考までに、腐敗状況によってはフローリングの解体が必要になることもあります。
【現場写真⑦】居間で吐血して孤独死?
畳の上で亡くなったと思われる腐敗体液がはっきりと確認できます。ウジ虫も多数発生しています。新聞紙や電卓などが近くにあり、死の直前までの様子が手に取るようにわかります。
特殊清掃員にはこんな人が向いてる
2008年から特殊清掃業を営んできた私の経験から分かった特殊清掃業界で活躍できる人の特徴を4つ挙げています。
【特徴①】儲かる事に興味が強い人
いやらしい話だが、お金が好きな人が向いているでしょう。しかし勘違いしないでください。
お金を使う事が好きなのではなく、特殊清掃サービスを通じて、お客様から感謝された結果、儲かる事に興味を持っている人が向いてると思います。
その理由は、究極の3K仕事だが、頑張って現場数をこなせば、平均年収(20代女性319万円〜50代男性658万円)以上も十分に可能だからです。
【特徴②】仕事内容が3Kでも耐える人
3Kとは、【きつい・汚い・危険】のアルファベット頭文字を取った造語になります。
言うまでもなく、特に潔癖症の人は、孤独死で汚染された臭い部屋の特殊清掃には耐えられないです。
だからといって、全く汚れや臭いが気にならない人も向いていないでしょう。
汚れを見たら「よ~し、きれいに片付けてやるぞ!」と、やる気になる人が向いてると思います。
【特徴③】お困りごと解決への使命感が強い人
遺体があった部屋をそのまま片付けないで放置すると、リフォーム業者にも依頼できず、ずっと空き家のままになり、所有者も困り、防犯上もよくありません。
そんな部屋の片付けは、故人の供養のためにも、誰かがしなければならないのです。
「だったら私がやろう」という使命感を持った人が向いてるでしょう。
なぜならば、特殊清掃は、故人への尊厳とご遺族への寄り添う気持ち、世間への使命感なしでは、決して長続きできる仕事ではないからです。
【特徴④】タブーな行為を絶対にしない人
すでにお伝えしている下記5つのタブーを心の奥底でも思い付かない人物が、特殊清掃員には必須な人となりと言えます。
- 乱暴で心無い雑な作業
- 個人情報の口外
- 現場での不謹慎な笑い声
- 無断で現場写真の公開
- 貴重品や金品のネコババ
上記5つに興味がなくて絶対にしない人は、それだけ故人と遺族に寄り添える心の持ち主と思われますので、それだけ特殊清掃員の気質に合っているでしょう。
【まとめ】タブーは故人と遺族を守るため
一般的にタブーと言えば、その理由があやふやだったり、昔からの習慣だからというケースが多いと思います。
しかし、このページを読まれて感じられたと思いますが、特殊清掃員のタブーは、都市伝説的なものではなく、亡くなられた人とその遺族の尊厳と財産を守るためにあります。
もしも特殊清掃員の仕事に興味を持たれているのなら、この事を肝に銘じておいてくださいね。