自殺現場の後始末と清掃を仕事として行っている私の体験談

身内が自殺してしまい、辛い気持ちの中で、不動産管理会社やご近所から連絡があり、清掃や後始末をしなければならない。

しかし、一体どうすればいいのか全く分からずにお悩みではありませんか?実は下記のような失敗ケースがよくあるので注意してください。

  • 清掃業者に依頼したら部屋は綺麗になったが、消臭作業は別業者に依頼するしかなく2重に費用が掛かる。
  • 自殺現場なので知り合いの清掃業者に頼みづらいから、適当にネット見つけて依頼したら雑な作業で高額費用だった。

そんな失敗を避けてもらうために、今日は、実際に行なわれている自殺現場の清掃や後始末と、気になるその費用負担についてお伝えします。

目次

特殊清掃業者が語る自殺現場の清掃の体験談

はじめに2008年から特殊清掃業を営んでいる私が、自殺現場の清掃体験談を2つほど挙げてみました。

【体験談①】多量の睡眠薬の服用で眠るように亡くなっていた

遺族の人の話では、睡眠薬を多量に飲んでの自殺だったようです。

死後1ヶ月以上経過してから発見されたので、遺体はかなり腐敗が進んでいて、悪臭を放っていました。

【体験談②】リストカット後、廊下で死亡

日頃から人間関係に悩みがあったようで、トイレでリストカットして自殺を図ったらしい。

しかし、意識が朦朧とし始めて怖くなったからか、その場から離れて、廊下で彷徨いながら力尽きてしまったようです。

自殺現場の後始末をできるようにするための清掃方法

次に、自殺から数日以上経過して遺体の傷みが激しく、死臭や害虫が発生している現場の具体的な清掃方法をお伝えします。

この害虫や死臭が充満している自殺現場を何とかしなければ、その部屋の後始末はできませんからね。

ハエやゴキブリなどを駆除する

まずは害虫駆除から作業開始

まずは、ハエやゴキブリなどが逃げ出して、自殺遺体から染み出た腐敗体液を広めないように、害虫を駆除します。

腐敗体液が付着している物を搬出する

悪臭がする品を搬出して片付け

腐敗体液が付着している物の中で、フトンや畳、ベッドなど搬出できる物は、他箇所に腐敗体液を付着させないように気をつけながら搬出します。

腐敗体液を洗浄する

床の体液をきちんと洗浄し状況によっては解体

上記以外に搬出できない床や建具などは、ブラシや雑巾などで丁寧に腐敗体液を除去しながら洗浄します。

該当箇所に消臭剤と消毒剤を撒く

消臭除菌剤をしっかりと噴霧

洗浄した箇所に、自殺などの孤独死専用の消臭剤を撒きます。その後30分以上時間をおいて消毒剤を撒きます。

該当箇所の消臭確認をする

作業員が異臭の有無を直接確認

床や壁などに数センチまで鼻を近づけて死臭の有無を確認します。消臭確認を機械でされている業者もいますが、私たちは、人間の鼻に勝る消臭確認はないと考えています。

遺品を整理して運び出す

悪臭がする家財は買取不可能なので処分

自殺からの経過日数や温度、湿度等の室内環境によっては、家具などの遺品にも死臭が移っていることがあります。そのため自殺現場の清掃には、遺品を整理して運び出すことは不可欠です。

部屋全体のホコリ等を清掃する

簡単なハウスクリーニング程度の掃除

遺品もそうでしたが、部屋のホコリにも死臭が染み付いていますので、簡単な清掃をする必要があります。

部屋全体を消臭する

幅広い範囲に散布するのがポイント

遺体の腐食度合いによっては、自殺があった箇所だけでなく、天井や窓、壁にも死臭が染み付いています。そのため部屋の隅々まで死臭専用の消臭剤を噴霧します。

部屋全体を消毒する

仮に死臭がしっかりと消臭できても、自殺現場特有の雑菌が残っていることも考えられます。そのままでは再び死臭を発生させることもありますので、専用の消毒剤を噴霧します。

再度 消臭確認をする

作業員が臭気を判断

最終確認のため、部屋の隅々まで、実際に鼻を近づけて死臭が消えていることを確認します。もしも死臭が残っている場合は、何度でも消臭剤の噴霧を繰り返します。

このように自殺があった現場を清掃する業者は「特殊清掃業者」と呼ばれています。

自殺現場の清掃をするのはこんな人たちです

どのような自殺現場でも遺体自体は、必ず警察が一旦引き取りますが、実は、その後の現場清掃は。場所によって行なう人は異なってきます。ここでは、主な3つのシーンに分けてお伝えします。

【シーン①】部屋での自殺

悪臭がする品を搬出して片付け

消臭除菌剤をしっかりと噴霧

部屋で自殺があった場合は、自殺部屋を清掃する専門業者がいます。その業者のことを業界用語で「特殊清掃業者」といいます。

ネットで特殊清掃と検索すれば、たくさんの業者を見つけることが出来ます。

この特殊清掃については「特殊清掃の基本的な情報」で、詳しくお伝えしています。

【シーン②】飛び降り自殺

ここでは、ビル敷地内に落下した場合と公道に落下した場合の2つに分けてお伝えします。

敷地内

ビルのオーナーが清掃責任を負うことになりますが、実質はビル管理会社か、もしくはその管理会社と契約している特殊清掃業者が清掃します。

公道

市区町村やその関係者が清掃を行ないます。それと非常に稀ですが、連絡を受けて私たちのような特殊清掃業者が行なうこともあります。

【シーン③】電車への飛び込み自殺

一刻も早く清掃して通常ダイヤに戻さなければならないので、すぐに駆けつけられる鉄道会社の社員が行なうか、もしくは鉄道会社が提携している業者が清掃を行ないます。

自殺現場の清掃費用の目安

部屋での自殺 60,500円~550,000円(総額)
飛び降り自殺 100,000円 ~1,000,000円(詳細不明)
飛び込み自殺 100,000円 ~1,000,000円(詳細不明)

上記金額は、あくまでも清掃費用のみの目安です。特に飛び降り自殺と飛び込み自殺は、状況によっては、その他損害賠償などで億単位の金額になることもあるようです。

清掃費用を負担する人

基本的には死亡者の法定相続人に清掃費用を負担する義務があると言われています。

しかし飛び降りや飛び込みの場合は、自殺現場となった企業がその種の保険に加入していて、清掃費用はその保険金で賄われていることが多いようです。

一方、賃貸部屋での自殺の場合は、その連帯保証人や法定相続人が負担することが通常です。

清掃費用の金額幅が大きい理由

部屋での自殺現場に限ってですが、下記3点から清掃費用の金額に大きな差が出てしまいます。

  1. 死亡から遺体発見までの日数
  2. 室内の気温と湿度の高低
  3. 亡くなった人の体脂肪率

3つともに共通することは、遺体から流れ出た腐敗体液が多くなるか少なめになるかの要因になっていることです。

腐敗体液の中でも脂肪分が強烈な死臭を放って消臭にはとても厄介ですので、その流れ出た量によって特殊清掃の費用金額が、どうしても大きく異なってきます。

自殺の後始末をしなければならないは法定相続人

後始末とは、清掃以外に済まさなければならないことです。例えば「心理的瑕疵物件」「精神的苦痛」「風評被害」などの損害賠償の対応などがそれに当たります。

その後片付けの対応は、法定相続人がしなければなりません。

そのワケは、亡くなった瞬間に何の手続きをしなくても自動的に法定相続人にプラス財産は当然ですが、自殺の後片付けなどのマイナス財産も相続しているからです。

心理的瑕疵物件の損害賠償はある

心理的瑕疵物件は、賃貸部屋の場合には必ずといっていいほど発生する後始末です。心理的瑕疵物件とは、不動産取引において主に告知事項ありのことをいいます。

法律では、部屋で自殺があった場合は、自殺のことをキチンと告知して賃借人を募集しなければなりません。

そのため、借り手の需要が激減し空き部屋の期間が長くなったり、どうしても家賃や敷金を低くしなければなりません。

本来見込まれる家賃収入額との差額分を法定相続人が補填しなければならないのです。

損害賠償の期間

本当は損害賠償の金額をお伝えしたいのですが、その金額は家賃の金額や新しい入居者の有無によって、全く検討も付かないので、ここでは差額家賃を補填しなければならない期間の目安をお伝えします。

損害賠償の期間目安 1年~2年

精神的苦痛の損害賠償はほぼ無し

マンション部屋で自殺があった場合に、同じフロアの住人から精神的苦痛を味わったと損害賠償を請求されることがあります。

以前は裁判でもこの種の損害賠償は認められていたようですが、近年では認められないケースが多いようです。だから法定相続人よる後始末の必要性がなくなりつつあります。

しかし完全に無くなったわけではありませんので、不幸にも身内に自殺者が出た場合、同じフロアの住人にはしっかり気遣いをしておきましょう。

風評被害の損害賠償はありえない

ビルや店舗等で自殺した場合、そのビルや店舗のイメージが悪くなったと、風評被害の損害賠償請求を受けることがあります。

しかし、特殊な例を除いて認められていないようです。

個人である法定相続人に数千万~数億年単位に膨れ上がる企業の風評被害の損害賠償は相応しくないと判断させているのでしょうね。

費用の直接支払いを回避する方法

心理的瑕疵物件などで費用が発生した場合、その費用の直接支払いを回避できる方法は2つあります。それは相続放棄と限定承認です。

①相続放棄とは

相続放棄とは、プラス財産もマイナス財産もまったく相続しないというものです。

預貯金や株、土地などがプラス財産にあたり、心理的瑕疵物件の差額負担や借金などはマイナス財産になります。

3ヶ月以内に申立てが必要

この相続放棄をするには、自分に相続の開始があったことを知った日から 3カ月以内 に家庭裁判所に申立てなければなりません。

この期間を過ぎますと、単純承認(通常の相続)をしたものとみなされ、プラス財産もマイナス財産も相続することになります。

この期間を過ぎてしまうと…

つまり、そのまま放置しておくと、心理的瑕疵物件の差額負担は、直接支払わなければならなくなります。

差額の直接支払いを回避するには、必ず3カ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申し出をしましょう。

より詳しい説明は、https://www.courts.go.jp/をご覧ください。

②限定承認とは

プラスの財産よりマイナスの財産が明らかに多い場合には、相続放棄をすればよいのですが、どちらが多いかわからない場合があります。こうした場合に有効なのが限定承認です。

限定承認は相続人に有利

限定承認とは、相続したマイナス財産を相続したプラスの財産から相殺し、マイナスが多い場合は、相続人固有の財産で支払いする責任を負わないというものです。

相殺の結果、プラス財産があれば、相続人のものになります。もちろんマイナス財産の中には心理的瑕疵物件の差額負担も含まれているので、相続人が差額を直接支払う必要はありません。

間接的に支払う可能性がある

でも結局は、心理的瑕疵物件の差額負担はプラス財産で相殺されることになります。つまり間接的に支払うことになります。

またその他のマイナス財産がプラス財産より多い場合は、心理的瑕疵物件の差額負担は全くありませんが、相続した財産全体がマイナスなので、財産が手元に残ることもありません。

より詳しい説明は、https://www.courts.go.jp/をご覧ください。

よくある疑問

ここでは、自殺にまつわることで一般の人がよく疑問に思われていることをQ&A式で3つお伝えします。

自殺があった部屋はそのまま貸し出すの?

【回答】通常は特殊清掃やリフォームを行い、新たに賃借人を募集します。その際は、必ず、募集事項欄に告知事項と記されて自殺があったことが告げられています。

お祓いはした方がいい?

【回答】近年では、自殺者が増加の一途を辿っているので、お祓いをされるケースは少なくなっています。そのため別段にお祓いをされなくても問題はないと思われます。

首つり自殺の場合、糞尿が漏れ出るの?

【回答】はい、垂れ流しになります。その理由は、筋力が全くなくなるからです。

生きている人間は無意識ですが、膀胱排尿筋で糞尿が体内から漏れ出すのを防いでいます。その筋肉に力が入らなければ当然、糞尿は体外に出てきます。

まとめ

自殺現場の清掃や後始末について、基本的なことをお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか。

特に身内の自殺でお困りの人は、一度「特殊清掃」と検索してみてください。きっとお困り事を解決出来ると思います。

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