マンションで自殺が起きたときの対処法とマンションの価値変動

親族や友人が賃貸マンションで自殺してしまい、まだ悲しみが癒えない中、不動産管理会社や大家からマンションの退去について連絡があり、戸惑っているのではないでしょうか。

そこで、今日は賃貸マンションで自殺があった後の損害賠償責任についてと、あなたがしなければならない可能性がある基本的なことをお伝えします。

基本的なことだけでも知っておくと、戸惑いが幾分かは和らぐのではないでしょうか。まずは私たちが見聞きしたマンション自殺の現場体験談からお伝えします。

目次

マンションの自殺現場に遭遇した体験談

まずは、私たち特殊清掃業者が強烈の印象に残ったマンション自殺現場と関係者からお聞きしたマンション自殺の体験談を合わせて3つをお伝えします。

【体験談①】腹部を刺してベッドが血の海に

弟が自殺したので、そのマンション部屋を清掃して欲しいとの電話があって、早速私たちは現場に向かいました。

通常であればドアを開けた瞬間に、腐敗臭が鼻を刺激するのですが、この時は全くと言っていいほど匂いはしませんでした。あれ?と思って奥の部屋まで進むと、上記写真のような惨状を目の当たりにしました。

警察からの話では、包丁で腹部を刺して自殺されたとの事でした。死後経過日数がほとんどなかったので、まだ腐食がはじまっていなかったので、腐敗臭がなかったようです。

その代わりに、まだ真っ赤に染まった鮮血がベッドを覆っており、まるで今しがた自殺があったかのような空気が部屋中に漂っていました。

まだ血液が床まで達していなかったので、特殊清掃と言っても、ベッド一式を回収する作業と部屋全体の消臭剤噴霧でほぼ完了しました。

【体験談②】得体の知れない幼虫が湧いていた

天涯孤独だったらしく自殺してから約半年後に、市職員の訪問活動によって発見されたようです。布団の上で、半分ミイラ化された遺体だったようです。

警察の鑑識が遺体を搬出する際に、遺体と布団がへばり付いていたため、布団も一緒に搬出した時に、その布団下には得体の知れない幼虫が湧いていたそうです。

よく見ると、その成虫も何匹かおり、遺体を捕食して成長したかと思うと、自分の身体が食べられているのを想像して思わず、ゾッとしてしまいますよね。

【体験談③】トイレで起きたリストカット自殺

娘の携帯電話に何度連絡しても出ないので、マンションまで訪ねても全く人気がしないので、合鍵を使って部屋に入ると、案の定、室内は静まり返っていました。

そして、何気なくトイレのドアを開けると、そこには左手を血で赤く染まった便器に突っ込んだまま、我が子は倒れていました。声を掛けても反応はなく、すぐに119番に電話した後は、ただただ呆然と立ちすくむだけでした。

警察からは自殺だろうと言われ、その苦痛に気付かなかった自分に苛まれている中、追い討ちをかけるように、マンションのオーナーから原状回復費用の話を切り出されて、キチンと払ってくれないのなら裁判も辞さないと、脅しのような事を言われました。

母一人で娘を育ててきた私の人生は、一体何だったのでしょうか?

賃貸マンションで自殺があった場合の賠償責任について

次は、多くの人が一番に気になっているであろう賃貸マンションで自殺があった場合、その賠償責任は一体どのようになるかについてお伝えします。

賠償責任を負う人は「遺族(相続人)」と「連帯保証人」

自殺によって亡くなった人が起こした損害ですので、遺族(相続人)はその損害も含めて相続していますので、マンションオーナーが受けた賠償に対して責任を負うになります。

また遺族(相続人)とは別に連帯保証人がいれば、そのほうが優先されます。

賠償責任の内訳は「原状回復」と「逸失利益」

原状回復とは

経年劣化部分を除き、入居しはじめた当時の状態に部屋を戻すことが原状回復です。

自殺があったマンションでは、クロスや床の貼り替え、消臭清掃、遺品整理などが原状回復に当たります。

逸失利益(いっしつりえき)とは

自殺があったことにより、その後の入居希望者に対して、そのマンション部屋で自殺があったことを告知しなければなりません。

それによって生じる空室期間や減額した家賃と正規家賃との差額などのことをいいます。

隣接住人への逸失利益の賠償責任はない

自殺があった部屋と同じ階や直下の住民から損害を賠償請求されるとの話を聞きますが、裁判所の判決では、近隣住民への逸失利益は認められていないようです。

あくまでも逸失利益の範囲は、自殺があったマンション部屋に限られるということですね。

賠償責任金額を定めた明確な基準はない

賠償金額に関しては、どの法律に照らし合わせても該当する決まりや基準はありません。

しかし、それでも今までの裁判所の判例からある程度の目安金額はあるようです。具体的には下記事例をご覧ください。

物件環境

  • ワンルームで都心、交通の便が良く、入居者の入れ替えも頻繁で隣近所の付き合いがほとんど無い
  • 72,000円(管理費含む)

賠償金

原状回復 90,000円
逸失利益 1年間の賃貸不能期間=864,000円
2年目は正規家賃の半額=432,000円
合計 1,386,000円

因みに、自殺物件の賠償責任を専門に扱う弁護士に依頼すれば、かなり金額面で優位になるとの話をよく耳にします。

遺族(相続人)なら賠償責任から逃れられる

自殺があった賃貸マンションの連帯保証人は、賠償責任から逃れることはできませんが、遺族(相続人)であれば相続放棄をすれば逃れることができます。

相続放棄とは

亡くなった人のプラス遺産もマイナス遺産も相続することを放棄することです。

マイナス遺産は自殺による損害賠償も含まれているので、相続放棄すれば法律に乗っ取って賠償責任から逃れることができます。

相続放棄は遺産調査をしてからが良い

ただし、無論、土地や預貯金などのプラス遺産も相続できなくなるので、しっかりと遺産調査をした後に相続放棄の手続きをされることをおススメいたします。

自殺があったマンションの賠償責任について、さらに詳しく知りたい人は、http://ihinseiri-dai8.jp/zisatusitumon/で、解説されています。

自殺があったマンションは原状回復しなければならない

自殺の場合でも退去手続きは必要になります。退去手続きには、原状回復の履行や未払い家賃、公共料金等の支払いがあります。

この項目では、マンションで自殺があった場合にポイントとなる3種類の原状回復についてお伝えします。

【ポイント①】部屋の掃除

自殺があったマンションの清掃は、さすがに個人や通常のハウスクリーニング業者ではできないと思われます。

その理由は、強烈な腐敗臭がマンション部屋中に充満しているからです。ほとんどの人は入室することさえも拒まれると思います。

自殺マンションの清掃とは、主にその腐敗臭の消臭清掃を意味します。最近では、「特殊清掃業者」と呼ばれる自殺マンションの清掃専門業者も現れて、遺族たちのお役に立っているようです。

特殊清掃業者の清掃方法については「特殊清掃員が教える!腐敗臭を消臭するための最適な消臭剤」で、詳しくお伝えしています。

【ポイント②】遺品の撤去、処分

通常のマンション退去時と同様に、亡くなった人の家財などはすべて搬出しなければなりません。

家財(遺品)の中に貴重品や思い出の品、遺書等もありますので、そのため一旦遺品を整理して、処分することになります。

また自殺から発見までの経過日数によっては、遺品からも腐敗臭が発生することもあります。そのような場合は、個人や不用品回収業者では遺品の搬出や処分は難しいでしょう。

このような亡くなられた人の遺品の搬出や処分することは「遺品整理」とも呼ばれています。そこで、最近では遺品整理を専用に行なう業者も登場しています。

その遺品整理業者については「遺品整理業者63社を徹底比較|口コミと悪徳業者の見分け方」で、詳しくお伝えしています。

【ポイント③】リフォーム

上記の特殊清掃と遺品整理を行なっても、原因不明で腐敗臭が残ってしまい、キチンと原状回復ができないことが稀にあります。そのような場合はリフォームが必要になることもあります。

しかし、そのリフォーム内容は、直接遺体が触れていた部分や腐敗体液が付着していた部分に限られます。

後項目で詳しくお伝えしますが、その他の部分や経年劣化による傷み箇所は原状回復の範囲ではありません。

注意

私個人の経験からですが、基本的にはキチンと特殊清掃を行なっていれば、リフォームはほぼ不要だと考えています。

なぜならば、プロが特殊清掃を行なうと99%は腐敗臭の消臭がされているからです。

【注目記事】 特殊清掃って一体どうやるの?
特殊清掃って、ハウスクリーニングのやり方とは異なると思うが、実際にはどのような方法でしているの?と気になりますよね。
そこで、私たちが行なっている具体的な特殊清掃の内容や手順を「特殊清掃業者がしている作業内容」で、詳しく解説しています。

自殺マンションの原状回復義務はあなたにある可能性も

自殺マンションの原状回復義務は、相続人(遺族)または連帯保証人に生じてきます。ここでは、なぜその両者に義務が生じるのかをお伝えします。

もしもあなたが相続人(遺族)または連帯保証人あるならば、その理由を知っておきましょう。

あなたが相続人(遺族)の場合

基本的に原状回復の義務は、入居者にあります。その入居者が亡くなった場合は、預金などのプラス財産が相続人に相続されますが、同時に借金や原状回復などのマイナス財産も相続されます。

そのため、相続人(遺族)に自殺マンションの原状回復義務があります。

あなたが連帯保証人の場合

賃貸契約上、連帯保証人は入居者と同等に扱われます。つまり入居者本人が退去するときと同様の原状回復義務が連帯保証人に生じます。

入居者本人が自殺してしまったのですから、本人に代わってやらなければなりません。

なぜならば、連帯保証人とは、自殺だけでなく、本人が行方不明や支払い拒否などのための代行者なのですから。

あなたがマンション所有者(大家)の場合

すべての相続人が相続放棄した場合や連帯保証人の死亡、所在不明の場合は、マンション所有者(大家)が原状回復費用の負担をするしかありません。

マンション所有者(大家)の場合は義務ではありませんが、そのままにしておいても何ら状況は変わらず、損をし続けることになりますので、原状回復費用の負担をせざるを得ません。

自殺マンションの原状回復の費用目安と注意点

原状回復費用の金額を決めて、相続人や連帯保証人に請求するのは、マンション所有者(大家)です。

自己所有のものに掛ける費用ですから、元々高額になりがちなうえに、自殺があったわけですから、さらに高額な請求されることが予想されます。

そこで、適切な原状回復の費用目安をお伝えしますので、参考にしてください。

特殊清掃の費用目安

特殊清掃 60,500円〜550,000円
  • 遺体発見までの日数や亡くなった箇所、腐乱状態等によってどうしても金額に大きな幅があることはご了承ください
  • 原状回復リフォーム費用は含まれていません
  • 家具の処分などの遺品整理料金は含まれていません

特殊清掃料金の内訳

腐敗体液
汚染除去
27,500円〜220,000円
害虫駆除 16,500円〜55,000円
消臭除菌 16,500円〜275,000円

遺品整理の費用目安

ワンルーム 33,000円〜165,000円
1DK 33,000円〜198,000円
1LDK/2DK 55,000円〜412,000円
2LDK/3DK 99,000円〜693,000円
3LDK/4DK 131,000円〜1,122,000円
4LDK/5DK 165,000円〜1,320,000円
  • <遺品処分費や運搬費、作業費などを含む実際にお支払いされる総額を提示しています。
  • 金額に大きな幅がある理由は「遺品の量」「分別作業の程度」「階数・エレベーター有無」「トラック車両までの距離」などの違いがあるからです。
  • 部屋や遺品の状況によっては、上記金額を大きく超えることもあります。(例)ゴミ屋敷や孤独死など

リフォームの費用目安

通常のリフォーム料金の相場です。特殊清掃が伴う場合は、もしかしたら下記金額より割り増しがあるかもしれません。

トイレ 20万円~80万円
バスルーム 60万円~200万円
居室 60万円~200万円

注意点はリフォーム費用

その中でも特に高額になるのがリフォームです。本来、原状回復の範囲でないリフォームも自殺を理由に追加請求されることが多々あります。

その理由は、端的に言えば気持ちが悪いからです。そんな理由で高額請求されたら、たまったものではありませんよね。

ちなみに下記は、自殺を理由に追加されがちなリフォーム内容の一覧表です。

  • エアコン交換
  • クロス全面張替え
  • フローリング全面張替え
  • キッチン交換
  • カギ交換
  • 建具交換

もしも、このような明細で原状回復費用を請求されたら、「今、私は不当な高額請求をされている」と認識したほうがいいでしょう。

そのような場合は、次項目でお伝えしている専門家に相談されることをおススメします。

なぜならば、ほとんどの場合、マンション所有者(大家)側には、不動産管理会社などの専門家がついているので、とても一般人では太刀打ちできません。

注意

自殺された室内箇所や遺体の腐敗状態によっては、やむを得ずリフォームが必要になることもありますので、すべてのリフォームが不当な請求とは限りません。

1円でもリフォーム費用の負担を安くできる手順

このような異常をきたした高額なリフォーム費用を請求されて、弱気になって従ってはいけません。下記3つの手順に沿って、しっかりと適正なリフォーム費用の支払いに留めましょう。

【手順①】話し合い

まずは毅然とした態度で抗議し、穏やかな話し合いをしましょう。

コツは、感情的にならずに粘り強く話し合いをすることと、お互いが希望する負担金額を提示してその妥協点を探ることです。

【手順②】「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の提示

それでも相手が譲歩しない場合は、相続放棄の行使による揺さぶりや国交省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」内容を示して、しっかりと自分の主張に正当性があることを伝えましょう。

「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」のダウンロード先→ 国土交通省

【手順③】専門家へ相談

それでも話し合いがまとまらない場合は、専門家に相談されることを強くおススメします。

専門家ならではの相続人や連帯保証人の立場に沿った適切なアドバイス助言やサービスを受けられるはずです。

原状回復に関する専門家の相談先

サイト名 内藤寿彦法律事務所
電話番号 03-3459-6391
所在地 東京都港区虎ノ門5丁目12-13 白井ビル4階
サイト名 法律事務所オーセンス
電話番号 0120-888-737
所在地 東京都港区六本木4-1-4 黒崎ビル7階
サイト名 第八行政書士事務所
電話番号 0120-018-264
所在地 愛知県名古屋市熱田区六番2-9-23-604

不動産会社の社長に聞いてみた!自殺マンションの資産価値はどうなる?

最後に、15年来の知り合いの不動産会社の社長さんに自殺があったマンションの資産価値がどうなるのかを聞いてみましたので、共有しておきましょう。

その社長さんが言うことをまとめると、10年以上前まではどの事故物件も2〜3割資産価値が下落していたが、近年では下記のような現状だと言っておられました。

  • 元々資産価値が高いマンションはほぼ値段が下がらない
  • 平均的なマンションは2〜3割資産価値が下がる
  • 不人気なマンションは5割以上値引きされることもある

例えば、六本木ヒルズのようなマンションで自殺があっても全く資産価値は下がらず、一方、片田舎の不便なマンションだと5割以上安くなることも珍しくないとのことでした。

つまり、昔と比べて事故物件を気にされる人の割合が減ってきて人口が減少しているので、自殺があったマンション価値の二極化が進んでいるようですね。

自殺があったマンション等が見つけられるマップサイト

次の引っ越し先を選ぶ際に、そのマンションやアパートなどに前もって自殺があったかどうかが分かれば安心できますよね。

特に周辺相場より安い家賃の部屋を見つけると、すごく魅力的に感じますが、いろいろと良からぬ想像をして二の足を踏んでいる最中に他の人が入居してしまって後悔した経験はありませんか。

そこで、自殺などの事故物件かどうかが、一目で分かるマップサイトがありましたので、そのURLをお伝えしておきますね。

大島てる:http://www.oshimaland.co.jp/

上記サイトにある日本地図の該当地域をクリックしていけば、段々とアップ地図になって、お目当てのマンションやアパートで自殺や殺人事件や火事による焼死があったかどうかが、すぐに分かります。

まとめ

マンションで自殺があった際に相続人や連帯保証人が損害賠償の原状回復や逸失利益などについて、知っておくべき基本的なことをお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか。

この記事を読まれて少しでもあなたの精神的、金銭的な負担が減れば幸いです。

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