セルフネグレクトの原因と自己診断|実際の事例をもとに解説

もう70歳を過ぎている一人で暮らす親のことが気になり、介護や病気などのことをネットで情報収集していると、セルフネグレクトという文字を何度か見かけて、一体何だろうと思われているのではありませんか。

そこで、今日の記事では、セルフネグレクトの具体的な事例写真やセルフネグレクトになる原因などをお伝えしていますので、ぜひ参考にしてください。

目次

セルフネグレクトとは

セルフ-ネグレクトのセルフは分かるけど、ネグレクトってどういう意味?と思われている人は多いのではないでしょうか。

そこで、まずは、セルフネグレクトの基本的なことから押さえておきましょう。

自分自身を無視している人のことです

ネグレクトを日本語訳にすると、「無視する」になります。

そしてセルフとは自分のことですので、セルフネグレクトとは、自分自身を無視つまり自己放任し、自分に関心がない人またはその状態を表しています。

その状態とは、生活に必要な掃除や洗濯、食事、ゴミ出し、着替え、トイレでの排尿排便などを行わないまたはその能力がないために、室内環境や健康状態が悪くなっても周囲に助けを求めないで、安全や健康が脅かされているなどがそれに当たります。

セルフネグレクトは2つのタイプに大別できる

セルフネグレクトには、細かい基準で判断すれば多種多様なタイプがありますが、一般的には下記2つに大きくタイプ分けできるとされています。

【タイプ①】判断能力低下

主にうつ病や認知症などを患っているために、自己判断能力が低下していて、自分がセルフネグレクト状態だと気づいていないタイプになります。

このタイプは、重度のうつ病や認知症などの疾病が主な原因でセルフネグレクト状態になっているので、早急な治療が必要とされています。

【タイプ②】本人意思

身内との死別や失業などのショックによって、生きる気力を無くしまたは軽いうつ状態になり、自らの意思で健全な生活を拒んでいるタイプになります。

このタイプは、いわゆる心の病気が原因でセルフネグレクト状態になっているので、周囲や自治体などからのフォローで改善できる可能性が高いといえます。

全国で約12,000人いると推測される

2011年3月に発表された国の調査では、セルフネグレクトと思われる高齢者数は全国で推定最大12,1900人とされており、その約80%が一人で暮らしていると推測されています。

しかし、実際のセルフネグレクト者数は、家族との同居の場合、身内にセルフネグレクト者がいることを恥じ、うやむやにする傾向があるので、その数はもっと多いと思われます。

参照元URL:http://www.c-mei.jp/

30代~40代でセルフネグレクトは増えている?

この項目では、30代~40代でもセルフネグレクトが増えていることを示すニュース2つを挙げてみました。

30代女子がセルフネグレクトで孤独死!

家の中が足の踏み場もないほどゴミでいっぱいになっている。引きこもっているうちに体を清潔に保つことが億劫になり、長いこと歯も磨かず風呂にも入っていない……。

あなたの身の回りに、こんな人はいないだろうか?

今、何らかの理由で身の回りのことをしなくなって生活が崩壊状態にある、いわゆる「セルフネグレクト」に陥る人の増加が社会問題になっている。

続きを読む → http://news.livedoor.com/

ゴミ部屋で暮らす「セルフネグレクト」が30~40代で増加傾向

あまりの疲労や落ち込みから、食事や入浴といった日常動作に面倒くささを感じ、後回しにした経験はないだろうか。

多くの場合はストレス発散などで気を持ち直し、再びいつも通りの健やかな生活に戻るわけだが、一方で、生活を立て直すタイミングを逃し、ゴミ屋敷と化してしまう人もいる。

中にはついに気力も尽き果て、荒れた部屋の中で孤独死するケースもあるという。

続きを読む → http://news.mixi.jp/

セルフネグレクトの具体的な症状事例5つ

ここでは、顕著にみられるセルフネグレクトの具体的な症状事例5つをお伝えしています。

【症状①】健康的な食事を摂らない

前向きに生きる気力がないまたは生きている感覚さえも感じる力がないので、当然、調理することもなく、簡単にできるカップ麺などの加工食品ばかりを摂るようになり、次第に不健康な身体になっていきます。

【症状②】金銭管理ができなくなる

判断能力が著しく欠けているので、お金の使い方の優先度もわからなくなり、金銭管理ができなくなります。

その結果、部屋には買い物で荷物がいっぱいになってしまうケースがあります。

【症状③】身なりが著しくだらしなくなる

自分自身に興味がなく無視しているので、入浴もほとんどせず、髪やひげが伸び放題になり、衣服も何日も着続けて極端に汚れていて、身体や着衣から悪臭がするなど不衛生な身体になります。

【症状④】部屋が極度に不衛生になる

部屋が散らかっていても整理整頓しようとする考えに至らなくなるので、部屋は全く掃除されずに、ゴキブリやハエ、カビが湧いて、いわゆるゴミ屋敷状態になることもあります。

【症状⑤】 周囲との関わりを拒絶する

上記のような自堕落な生活ぶりを知られたくないため、周りの人々との接触を拒絶する傾向が強くなります。

すると、その孤独感からさらにセルフネグレクトは加速度的に進んでしまいます。

セルフネグレクトと孤独死は直結している

この記事でお伝えしましたように、セルフネグレクトの典型例は、高齢者の一人暮らしで、周囲との接触を断ち、部屋の中は荒れ放題になっています。まさしく「社会の離れ小島」といえます。

セルフネグレクトの多くは高齢で孤立している

そのため、部屋の中で体調を壊しても、普段から身内や周囲住民とコミュニケーションを取っていないので孤独がちになり相談できません。

また汚れた部屋を見られたくないので助けを必要としているのですが、どうしたらいいのかわからずそのまま自己放置してしまいます。

高齢者の孤立は孤独死を招く

その結果が、近年急増中の孤独死です。人は孤独死してしまうと、腐敗して遺体にはゴキブリやハエが集り、強烈な悪臭を放ちます。

遺体は警察が引き取っていきますが、それだけでは部屋に死臭は充満したままです。

無論そのまま部屋を放置するわけにはいかないので、片付けや消臭をすることになるのですが、一般のハウスクリーニング業者では、ほとんど対応していません。

孤独死の片付けは専門業者に相談

そこで、最近注目を集めているのが、孤独死があった部屋を専門に片付けや消臭清掃をする「特殊清掃業者」の存在です。

特殊清掃業者については「特殊清掃の基本的な情報」で、詳しくお伝えしています。

私が見たセルフネグレクトな部屋

はじめに、特殊清掃業に携わっている最中に、私が見たセルフネグレクトが原因でゴミ屋敷になった部屋の事例写真3つをお見せ致しますね。

【事例①】不思議!どこで寝ていたのだろうか?

性別 男性
年齢 50代
住まい 東京都中野区
同居人 無し
職業 会社員

【事例②】便器が詰まっただけで何故こうなる?

性別 女性
年齢 60代
住まい 埼玉県柏市
同居人
職業 無職

【事例③】片付けようと努力されていたようだが…

性別 女性
年齢 30代
住まい 神奈川県川崎市
同居人 両親
職業 介護士

セルフネグレクトの原因

次に、高齢者と若者に分けて、可能性が高い順にセルフネグレクトになってしまう原因をそれぞれお伝えしています。

まずは、高齢者に多いセルフネグレクトの原因からです。

【原因①】身体の衰えからくる認知症

主に加齢に伴って脳が萎縮することで、記憶機能が低下することで、日常生活が困難になることが認知症と言われています。

その症状は、物忘れや無感情になり、論理的に物事を捉えることが困難になります。

対策:支援センターやサポート医師に相談

認知症は病気ですので、医師や専門家に相談されるのが、最も有効な対策方法になります。特に部屋から悪臭が漏れ出したゴミ屋敷などは、かなりセルフネグレクトが進んだケースに当たります。

このような場合は、素人である親族などだけで対応すると、反対に本人の感情を逆撫でして、より頑なに他人とのコミュニケーションを拒み、一向にセルフネグレクトを治すことはできないケースが多々あります。

そんな場合は、セルフネグレクトの支援センターやサポート医師に相談するに限ります。治療知識を持った専門家が対応してくれるので、その治療効果は非常に高いといわれています。

詳しい支援内容などは、下記サイト内の各地域の電話番号に連絡してみてください。

全国の民生委員児童委員
https://www2.shakyo.or.jp/zenminjiren/
認知症サポート医(東京都)
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/

【注意】薬服用は最終手段です

セルフネグレクトのことをあまり理解していない心療内科や精神科などの病院に行くと、すぐに抗うつ剤や安定剤などを処方される場合があります。そんな病院には通院されないほうがいいでしょう。

なぜならば、はじめから薬に頼っていると、すぐにより薬効が強い向精神薬やさらに強力な抗精神薬の服用へとエスカレートして、たとえセルフネグレクトが治療できても、社会復帰までにかなりの期間を要することになるからです。

セルフネグレクト治療には、薬服用は最終手段であることを十分に承知しておきましょう。

【原因②】心理的または空間的な孤独感

高齢の人が孤独を感じる場面は、主に下記の3つがあると言われています。

  1. 配偶者との死別
  2. 家族や近隣付き合いの希薄
  3. 震災や災害

特にリタイヤした高齢男性に多いのですが、妻を失ったことにより、空虚感から生きる気力がなくなり、自律神経などは大きく乱れて、周囲との接触を一切断ち、そのままセルフネグレクトになるケースが目立ちます。

もちろん、ゴミ出しや掃除をする気力もないので、立ち直るキッカケがなければ、徐々に住まいはゴミ屋敷と化してきます。

対策:コミュニケーションを取る

セルフネグレクトに陥る多くの人は、孤独で悲壮感を待つ一方で、気遣いを嫌い、他人を遠ざける傾向があります。

その傾向が、周囲に気付かれず自分一人で悩みなどを抱え込み、セルフネグレクトに陥るきっかけになっています。

心理的な孤独をさせないことが重要です。そのため、セルフネグレクト対策には、まずはコミュニケーションを取ることが大切です。つまり「孤独状態を作らないこと」です。

無論、顔を合わせてのコミュニケーションが一番良いですが、何も難しく考える必要はありません。

ただ単に「何しているの?」などの定期的な電話コミュニケーションだけでも、十分にセルフネグレクト対策になります。

最後は、若者に多いセルフネグレクトの原因になります。

【原因③】人間不信やゲームによる引きこもり

友人から裏切られたり、突然の解雇やゲームにハマったりして、人と関わるのが億劫になり、段々と部屋に引きこもるようになります。

それをキッカケに、副交感神経が優位になり、うつ状態が続いて、セルフネグレクトな行動を起こすようになります。

対策:自宅でできる仕事先を見つける

これは、私の経験から見つけた対策なので、若者すべてに有効ではないかもしれませんが、引きこもった状態でもできる仕事に就くことで、徐々にセルフネグレクト症状が収まることがあります。

私の甥は、はじめ月に数度の出社を嫌がっていましたが、しばらくすると、「たまに出社すると気分転換ができて丁度いい」と、言っていましたね。

ネット関連業界だったら、PC1台あれば、どこでもできる職種は割とあります。確かに人とのコミュニケーションは100%無いの職種はあまりありませんが…。

上記原因3つをみて、もしかしたら自分はセルフネグレクトでは?と不安になった人は、次項目でお伝えしているチェック表で、まずは自己診断してみてください。

セルフネグレクトのチェック表

一人暮らしである
入浴や洗顔、歯磨きなどの清潔習慣をほとんど行なっていない
部屋の片付けや掃除が嫌で定期的にゴミ捨てができない
栄養バランスが良い食事が面倒で毎日のようにジャンクフードで済ます
家族や友人、知人と半年以上連絡を取らず疎遠である
体調が悪いにも関わらず病院に行かないまたは拒否する
平日(仕事日)でも規則正しい生活を送れない

上記7つのチェック項目のうち3つ以上YESの人は、将来セルフネグレクトに陥る可能性が高いといえるかもしれませんので、気を付けましょう。

セルフネグレクトの事例

ごみ屋敷は自分虐待?セルフネグレクトの支援を

周辺住民を悩ませる「ごみ屋敷」が社会問題化する中、住人には認知症や疾患、障害を抱えた高齢者も多いとして、公的な支援を求める声が強まっている。

治療を拒む例もあり、こうした状態を自分への虐待とも言える「セルフネグレクト」(自己放任)と法的に定義すべきだとの指摘もある。ただ、本来は個人が自由に決める問題だけに、行政がどれだけ踏み込めるかが課題だ。

続きを読む → http://www.sankei.com/

なぜ普通の人が? “セルフネグレクト”

阿部「周囲から孤立し、家がいつの間にか“ゴミ屋敷”になる。皆さん、ひと事だと思わないでください。」各地で相次ぐ孤立死。社会問題化するゴミ屋敷。

実はほとんどが、ごく普通の生活をしていた人たちです。ちょっとしたきっかけで生活や健康が極端に悪化。それでも周囲に助けを求めない「セルフ・ネグレクト」と呼ばれる状況に陥っているのです。

続きを読む → http://www.nhk.or.jp/

ごみ屋敷 女性を救出…体埋もれ、両足壊死。セルフネグレクトか。

千葉県北西部で昨年5月、一軒家のごみがたまった一室から、足が壊死(えし)した状態の高齢女性が救出されていたことが分かった。女性は生活意欲などの衰えから身の回りのことができなくなるセルフネグレクト(自己放任)の疑いがある。

専門家は「他人の世話になりたくないなど、ごく普通の理由からセルフネグレクトは誰でもなり得る。高齢化が進み、この問題に向き合わなければ今回のような事例は増えていく」と警鐘を鳴らす。【工藤哲】

続きを読む → https://mainichi.jp/

セルフネグレクトに関する数値を抜粋してみました

この項目では、2018年に出版された「保健師ジャーナル」という本で、特集されていた「セルフネグレクト事例の押さえるべきポイント」記事から、気になる数字3つを抜粋してみました。

セルフネグレクトの推計値は10,785人

内閣府が実施したセルフネグレクト高齢者の調査では、セルフネグレクト状態にある全国の高齢者の推計値は、9,381人〜12,190人(平均値10,785人)と報告されており、調査時(2010年度)の高齢者人口2,958,000人に対して、わずか0.036%である。

これは、日本においては定義が不明瞭であることに加え、潜在化しているセルフネグレクト事例が多いためと推測される。

ゴミ屋敷住人の1/3は65歳以下

京都府が2015年に行なった調査では、セルフネグレクトと大きな関係があるゴミ屋敷を形成していた調査対象121例の世帯主の年齢を調べたところ、下表の通りでした。

80代以上 27%
60〜70代 38%
40〜50代 20%
30代以下 0%
不明 7%
居住者なし 8%

65歳以下が1/3を占める結果となっており、セルフネグレクトによるゴミ屋敷化は、高齢者だけの問題ではないことが数字で示された。

高齢セルフネグレクトの約18%はアルコール要因?

2009年に地域包括支援センター職員を対象に行なった岸らの研究では、高齢者のセルフネグレクトの約18%がアルコール問題を抱えていました。

また男性のセルフネグレクトのうち、約3割にアルコール問題が見られました。

さらに、セルフネグレクトのうち、60代の約4割に、独居の人の約2割に、糖尿病や慢性疾患を持っている人のうち約2割にアルコール問題が見られました。

まとめ

今日の記事では、セルフネグレクトについて、その意味や具体的な事例、原因、そしてセルフネグレクトの予防対策と治し方などをお伝えしましたが、参考になったでしょうか。

この記事がきっかけで、家族同士のコミュニケーションが増えれば、筆者としてこの上なくうれしく感じます。

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