孤独死が起きた大家さんの実録インタビューと凄惨な現場事例

入居者が孤独死して遺族や警察などにはどのように対応すればいいのだろうか?とか、その孤独死の清掃費用が問題になってお困りの大家さんは結構多いのではないでしょうか。

実は、今からでも孤独死があった際の基本的な対応や清掃費用の目安を知っておけば、余計な手間や費用を十分に抑えることが出来ます。

ということで、今日は、2008年から特殊清掃業を営んでいる私が、大家さんが被る3つの孤独死損害とその費用目安、そしてそれを予防する4つの対策をお伝えします。

孤独死で大家さんが体験した被害事例

まずは、私たちが特殊清掃依頼を受けて現場に行き、大家さんから聞いた孤独死による被害事例をお伝えします。

突然大家に起きた店子の孤独死

中々入居者が決まらないので、繁華街の飲食店で働いているちょっと派手目の女性からの入居募集を受け入れました。

引っ越し当初は、顔を合わす度に挨拶をキチンとする女性でしたが、半年ほど前から度々男性が部屋に訪れる様になってからは、姿を見る機会はほとんどなくなりました。

その男性とのトラブルで自殺して孤独死に…

自殺だった可能性もある特殊清掃現場

家賃の振込みがなかったので、電話してみても連絡がつかず、何度部屋を訪れても留守でした。

1週間も連絡が取れないので、もしかして男性と夜逃げかもと思ってマスターキーで部屋に入ると、上記写真でわかるようにリストカットによる自殺でした。

連帯保証人も遺族は全く費用を払わない

警察への対応と同時に、連帯保証人に連絡してみたものの連絡は取れず、遺族からは遺体は引き取るが、退去に伴う費用を払うお金は一切ないとの一点張りで、結局は大家である私が負担することに…。

ズバリその金額は遺品整理と特殊清掃とリフォーム、それに値下げ家賃も含めから数百万円は下りません。

因みに上記写真は、遺品整理と特殊清掃の終盤で、これから床磨きと部屋全体の消臭作業に入るところです。

孤独死で被害を受けた大家の声

キチンと連帯保証人まで取っていたので、まさか自殺による孤独死でこんな多額の費用を払う羽目になるとは思っていませんでした。

消臭清掃や遺品の片付けで費用は掛かるし、リフォームでさらに費用が掛かり、その上、自殺が有った部屋である事を告知しなければならないので、家賃も下げざるを得ません。

まさに踏んだり蹴ったりとはこの事ですね。これからは連帯保証人の所在確認のため、定期的な電話連絡を欠かさないようにするつもりです。

孤独死に伴い大家が被る3つの損害

孤独死発見にいたるきっかけは、ほとんどが近隣住民からの悪臭苦情か家賃未払いの発生です。その際に大家に降りかかると思われる損害には、主に以下の3つがあります。

  1. 孤独死部屋の原状回復
  2. 未払い家賃
  3. 将来の減額家賃(自殺による孤独死の場合)

これらの損害一部には、他者に請求できるものもあります。しかし基本的には、大家が孤独死関係の費用を一旦払うようになると覚悟しておいたほうがいいでしょう。

なぜならば、法的にまたは道義的にどうであれ、実際に損害に遭って困っているのは、大家であるあなたなのですから。

特に、孤独死部屋の原状回復費用を連帯保証人や相続人に直接費用負担してもらうために、話し合い等で長い時間が掛かったり、最悪の場合、その期間の家賃は無収入になることもあります。

次項目では、それぞれの基本的な損害内容をお伝えします。

孤独死部屋の原状回復

孤独死部屋の原状回復には、死臭消臭や遺品整理、リフォームなどがあります。死臭消臭は、別名で前出の通り特殊清掃とも呼ばれています。

特殊清掃業者については「特殊清掃の基本的な情報」で詳しくお伝えしています。では、それぞれの費用目安をお伝えします。

特殊清掃の費用目安

防護服を着用しながら遺体から染み出した腐敗体液を専用工具を使って除去

特殊清掃 60,500円~550,000円
  • 遺体発見までの日数や亡くなった箇所、腐乱状態等によってどうしても金額に大きな幅があることはご了承ください
  • 原状回復リフォーム費用は含まれていません
  • 家具の処分などの遺品整理料金は含まれていません

特殊清掃料金の内訳

【腐敗体液・汚物撤去】
主な作業内容 畳やフトン、ソファー等の腐敗体液の付着物の撤去回収および床の腐敗体液除去など
金額の目安 27,500円~220,000円
【害虫駆除】
主な作業内容 ハエやウジ、ゴキブリなどの殺虫と回収など
金額の目安 16,500円~55,000円
【消臭消毒】
主な作業内容 腐敗体液付着箇所の消毒および部屋全体の消臭作業など
金額の目安 16,500円~275,000円

遺品整理の費用目安

死臭の完全消臭には遺品整理も必須

ワンルーム 33,000円〜165,000円
1DK 33,000円〜198,000円
1LDK/2DK 55,000円〜412,000円
2LDK/3DK 99,000円〜693,000円
3LDK/4DK 131,000円〜1,122,000円
4LDK/5DK 165,000円〜1,320,000円
  • 遺品処分費や運搬費、作業費などを含む実際にお支払いされる総額を提示しています。
  • 金額に大きな幅がある理由は「遺品の量」「分別作業の程度」「階数・エレベーター有無」「トラック車両までの距離」などの違いがあるからです。
  • 部屋や遺品の状況によっては、上記金額を大きく超えることもあります。(例)ゴミ屋敷や孤独死など

リフォームの費用目安

通常のリフォーム料金の相場です。特殊清掃が伴う場合は、もしかしたら下記金額より割り増しがあるかもしれません。

ただし、経年劣化分のリフォームは連帯保証人や相続人に請求できません。

トイレ

リフォーム内容 主に便器の取り換え、天井と壁のクロス貼り替えなど。
費用目 200,000円~800,000円

バスルーム

リフォーム内容 主にユニットバスの取り換え、脱衣所の天井と壁のクロス貼り替えなど。
費用目安 600,000円~2,000,000円

居室

リフォーム内容 主に畳やフローリングの取り換え、天井と壁のクロス貼り替え、ドアの交換など。
費用目安 100,000円~1,000,000円

トータルで掛かる費用の目安金額

特殊清掃

遺品整理

リフォーム
285,000円~3,300,000円

連帯保証人に請求できる

孤独死部屋の原状回復費用のうち、全額また一部は連帯保証人に請求できます。その理由は、連帯保証人に入居者の監督責任があったからです。

つまり、連帯保証人がキチンと入居者を監督していれば孤独死は防げたはずだが、この度は防げなかったので、その費用は、連帯保証人が負担すべきというわけです。

参考URL:https://smtrc.jp/toushi/

いくら監督不行きだったとはいえ、連帯保証人に請求する際は、決して高圧的な態度ではなく、冷静にむしろ低姿勢な態度で行なったほうが賢い選択といえます。

連帯保証人が気分を害して、費用負担を渋ると困るのは、大家であるあなた自身なのですから。

相続人に請求できる

もしも連帯保証人と連絡が取れなかったり、費用負担を拒否された場合は、入居者の相続人に孤独死部屋の原状回復費用のうち、全額また一部は連帯保証人に請求できます。

なぜならば、相続人は、預金や資産などのプラス遺産はもちろんですが、孤独死部屋の原状回復費用などのマイナス遺産も相続しているからです。

参考URL:https://smtrc.jp/toushi/

相続人に請求する際は、連帯保証人のときと同様に低姿勢で臨んだほうがいいでしょう。

その理由はもうお分かりですね。相続人がゴネ始めると困るのは大家であるあなた自身なのですから。

いくら法的に正当な権利を行使しても手間や時間が余計に掛かったら、結果的に損することにもなりかねません。

未払い家賃の請求先について

孤独死で入居者本人が亡くなった日までではなく、遺品などが引き取られ、部屋の明け渡しが完了する日までの未払い家賃は、すでに預かっている敷金から充当できます。

参考URL:http://k-legal-office.com/

未払い家賃が敷金では足りない場合は、当然、連帯保証人や相続人に請求できます。

参考URL:http://akafuchi-law.com/
参考URL:http://www.erajapan.co.jp/

特に、相続人に未払い家賃を請求する際は、相続人から申し出がない限り、個人情報保護法などで相続人を特定することさえ困難と思われますので、弁護士等に相談するのがいいでしょう。

生活保護者の孤独死の場合

相続人がいれば相続人に請求はできますが、いなければ相続財産管理人に請求することになります。

しかし、相続財産管理人の選任には、裁判所への100万円の預託が必要になります。

よって、多くの大家さんは、相続人がいなければリスクを承知したうえで、敷金を全額没収して、福祉と相談しながら事実上退去手続きを進められるケースが多いようです。

参考URL:https://c-1012.bengo4.com/

将来の減額家賃の扱い

この項目では、自殺による孤独死で大家が請求できる将来の減額家賃についてお伝えします。因みに自殺以外の病死や自然死による孤独死は、将来の減額家賃は請求できません。

自殺があったことで、その部屋には心理的瑕疵があるとされて、いわゆる事故物件になります。この事故物件は、新しく入居者を募集する際は、自殺があったことを告知しなければなりません。(宅地建物取引業法47条、35条)

そうなると当然、家賃を減額しなければ入居者を得ることは難しくなります。そこで大家は、連帯保証または相続人に家賃の減額分を請求できる権利が法的に認められています。

参考URL:http://www.akasakamitsuke.jp/

通常、その請求できる金額は家賃金額の20~30%で、期間は約2~3年間分といわれています。

大家からみると、たったそれだけと思われるかもしれませんが、今までの裁判所の判例から推測すると、妥当だといわざるを得ません。

孤独死の告知義務について

自殺の場合は、宅地の取引に関する法律で大家に告知義務が課せられていますが、孤独死などの自然死の場合はケースバイケースのようです。

孤独死の告知義務に明確な決まりが無い理由は、賃借人側に孤独死があった部屋なら借りていなかったなどの心理的瑕疵があるかどうかによって決まるからです。

人間=賃借人の感性は、十人十色なので、全く同じ孤独死状況の部屋でも告知義務が発生する場合とそうでない場合もあるというわけです。

しかし多くの大家さんは、あとから損害賠償されるリスクを考慮して、孤独死でも2年~3年は告知しているようですね。

将来大家に降りかかる孤独死損害の対策

ここからは、大家のあなたに将来起こるかもしれない孤独死損害を予防する対策を5つお伝えします。

【対策①】賃貸住宅管理費用保険

孤独死の増加に伴い、近年一部の保険会社では、大家向けの賃貸住宅管理費用保険が登場しています。

この保険は、まさしく孤独死部屋の原状回復費用が賄える補償内容になっています。

参考URL:http://www.e-sp.info/air-ins/

【対策②】入居者への定期的な連絡

家賃の支払いが遅れたら、すぐに電話連絡をすることはもちろんですが、何も問題が発生していない時でも、3ヶ月ごとに連絡を取るようにしましょう。

その僅かなひと手間が孤独死予防になったり、死亡発見が早まり、その損害を最小限に留めることができます。

【対策③】定期的な連帯保証人の連絡先確認

孤独死部屋の原状回復費用等の一次的な負担責任者は、連帯保証人であるので多くの大家は、まずは連帯保証人に連絡を取ろうとします。

しかし、その連帯保証人が引越しをしていたり、死亡している場合は、連絡が取れなくなってしまいます。

連絡が取れない相手では、請求も何もできなくなりますので、それを防ぐために、半年か1年ごとに連帯保証人に連絡をしてちゃんと連絡が取れるかを確認しましょう。

本当は、連帯保証人に入居予定者の相続人がなってもらうのが一番いいのですが、それが難しい場合は、下記の方法もあります。

【対策④】契約時の相続人の所在確認

内覧の申込書に、極力、親や子ども(相続人)の所在情報を記入してもらうようにしましょう。

そして本契約になる際は、部屋の賃貸に関して連絡を取ることも承諾してもらい、実際に連絡が取れれば、相続人の連絡先が入手できるので、いざという時に相続人を探すという手間が省けます。

【対策⑤】孤独死保険に加入しておく

孤独死保険とは、孤独死だけでなく自殺や殺人も含めて、賃貸部屋で人が亡くなった際に発生する特殊清掃費や原状回復の費用、家賃値下げによる損害などを補償する保険です。

具体的には、少額短期保険や家主費用特約などが孤独死保険にあたります。詳しい補償内容や保険料などについては、http://www.air-ins.co.jp/ で解説されています。

まとめ

今日は、大家が被る3つの孤独死損害と費用目安、それを予防する4つの対策をお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか。

特に、特殊清掃の費用目安は、びっくりするほど高いと思われたのではないでしょうか。しかし安い業者には必ずそのワケがあります。

具体的に特殊清掃の依頼を考えている大家さんは、まずは「特殊清掃について」をお読みになってから、しっかりと業者選びをされてみてはいかがでしょうか。

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