死後の処置としての湯灌・エンゼルケアの基礎知識

死後の処置として、エンゼルケアや湯灌というものがあると聞いて、一体どのようなものだろうか?と思われているのではありませんか。

そうですよね。一般の人には中々馴染みのない言葉だと思います。

そこで、この記事では知り合いの葬儀会社社長からお聞きした湯灌・エンゼルケアについて、その目的や実際の手順等をお伝えします。ぜひ参考にしてください。

湯灌/エンゼルケアの概要と目的

まずは、湯灌・エンゼルケアの概要とその目的についてお伝えします。

湯灌/エンゼルケアとは

湯灌(ゆかん)とは、死後の処置として、死者の尊厳を守るために遺体を洗浄して身綺麗にすることです。

簡易には遺体を清拭(せいしき)することで済ませることもあります。入浴前後の内容物の排出や死化粧等の処置も含めて湯灌と言われることもあります。

また最近では、別名で「エンゼルケア」とも呼ばれることもあります。両者は同じことを指しています。

湯灌/エンゼルケアの目的

湯灌・エンゼルケアの目的には、以下の2つの目的があります。

【目的①】死者の尊厳を守るため

湯灌後、身なりを整えて死化粧をすることで、少しでも生前の姿に近づけて死者の自尊心を高めます。

【目的②】公衆衛生を保つ

時として、遺体には感染症などの原因となる病原菌を保持していることもあります。湯灌することでそれらの増殖を防ぐことができます。

近年では、お湯は菌の増殖を促すので、代わりに水や消毒液で行なわれているようです。

湯灌/エンゼルケアで必要な物と実際に行なう人

この項目では、湯灌・エンゼルケアを行なう際に必要な物と実際に作業を行なう人をお伝えします。

準備する物

・脱脂綿 ・割り箸 ・ガーゼ
・包帯 ・絆創膏 ・油紙
・T字帯 ・カミソリ ・外科用はさみ
・くし ・ヘアブラシ ・輪ゴム
・清拭用具 ・消毒液 ・便器および尿器
・膿盆 ・着替え ・シーツ
・ガウン ・マスク ・ゴム手袋

湯灌/エンゼルケアを行なう人

画像参照元:http://www.e-oishasan.net/

実際に湯灌・エンゼルケアを行なう人は、主に看護師または葬祭従事者ですが、要望があれば遺族と一緒に行ないます。

入院施設が整っている比較的大きな病院や葬儀会社であれば、基本的には湯灌・エンゼルケアを行なっていただけます。

湯灌/エンゼルケアの手順

ここでは、基本的な湯灌・エンゼルケアの手順を6つのポイントに分けてお伝えします。

【手順①】直後の処置

  1. 医師による死亡判定後、死者に一礼し、チューブや器機類などを取り外します。
  2. 義歯があれば装着し、口を閉じ、下あごを引く、顔の汚れ等を綺麗にし、目を閉じさせる。
  3. 死者が身につけていた貴金属類は外して遺族に手渡す。
  4. 末期の水(死に水)を準備し、遺族以外は室外に移動。そして遺族に最期の対面をしてもらう。
  5. 遺族に処置内容を説明し、以降の手順は、遺族の希望によっては一緒に作業をする。遺族の手伝ってもらうときは、マスク、ゴム手袋を着用してもらう。

【手順②】内容物の排出と清拭

  1. 【胃の内容物の排出】
    顔の掛け物を除き、顔の横に膿盆を置き、顔を横に向け、手の平で胃部を押させて内容物を吐かせる。吸引が必要になることもある。
  2. 【便尿の排出】
    便器、尿器をあてて、下腹部に両手をあてて恥骨に向かって圧迫して膀胱や腸の内容物をできる限り出す。
  3. 【清拭】
    全身を消毒液またはお湯で、丁寧に清拭する。

【手順③】綿を詰める

  1. 割り箸を用いて、鼻・口・耳・肛門・膣の順に綿を詰める。
  2. 【綿の詰め方】
    最初に脱脂綿、次に青梅綿を詰める。顔面の鼻・口・耳は再び脱脂綿を外から綿が見えないように詰める。
  3. 肛門には、綿を詰めた後、場合によっては紙おむつをあて、T字帯を着け、その上から下着を着せる。
  4. 顔面の様子が衰弱しているようなら、頬に少量の綿を入れて膨らみを持たせる。
  5. 傷部分があれば、ガーゼをあて、包帯または厚めのガーゼでカバーする。

【手順④】衣服の着替え

  1. 一般的には新しい浴衣に着替えさせます。2時間以上経過すると、死後硬直ははじまり、着替えが困難になることがあります。極力、湯灌・エンゼルケアのときに着替えさせましょう。
  2. 一般的には、着物は左前にします。ただし宗教によって異なることがあるので、死者の宗教を確認してからにしましょう。
  3. 着物の紐は縦結びにすることが多いようです。

【手順⑤】死化粧

  1. ひげを剃る。ガーゼで石鹸とお湯で皮膚を湿らせてから、皮膚を伸ばしながら剃ります。カミソリは寝かせます。
  2. 女性の場合は薄化粧をする。
  3. 必要に応じて手足の爪を切る。
  4. 下あごが下がるときは、タオルを巻いたものをあごの下に挟むか、包帯または三角布で吊るして口を閉じる。
  5. まぶたが閉じないときは、ティッシュペーパーを小さく切って、まぶたと眼球の間に入れてまぶたを閉じる。
  6. 髪を整える。
  7. 仏教の場合、胸上で手を組ませる。
  8. シーツを交換し、顔を白い布で覆い、一礼する。白い布で顔を覆うのは必須ではありません。遺族の意向で覆わないこともあります。

【手順⑥】後片付け

遺族に終了を告げて、使用した物等の後片づけをする。

湯灌/エンゼルケアの回数について

病院での湯灌・エンゼルケアは主に衛生目的で行います。一方 葬儀会社では死者を弔うため外見を整える目的の2度行なうのが好ましいでしょう。

湯灌/エンゼルケアの費用目安

湯灌・エンゼルケア 無料または
3,000円~30,000円

病院で亡くなった場合でも、湯灌・エンゼルケアは死後の処置になりますので、健康保険の対象外になります。健康保険は生者に対するものです。

しかし病院の方針により、無料で行なっているところもあります。

まとめ

今日は湯灌・エンゼルケアの目的や実際の手順等をお伝えしましたが、分かりやすかったでしょうか。

まだよくわからないという人は生前相談などで葬儀会社や施設職員に尋ねてみてくださいね。

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