下記のような状況になって、遺言書について興味を持たれているのではないでしょうか。
・遺品の中なら遺言書が見つかった
・年も年だからそろそろ遺言書を…
ということで、このページでは、遺言書の種類とその正しい書き方、そして遺言書を発見した際の対処方法などをお伝えします。
目次
遺言書には3つの危険性がある
まずは、遺言書の種類など基本的なことをお伝えする前に、遺言書に隠されている3つの危険性についてお伝えします。
特に、今から遺言書を作成予定の人は、とても重要ですのでしっかりと覚えておきましょう。
①書き方によっては無効になる
遺言書は当人の自由な様式で書いたら、法的にその遺言書が無効になることがあります。
無効とは、つまり遺言書ははじめから無かったことを意味します。
なぜならば、民法では遺言書の要件が定まられているからです。民法968条 → https://ja.wikibooks.org/
②紛失や滅失される事がある
一般的に遺言書の保管場所は、自宅や施設、貸金庫などがあります。
しかし自宅や施設の場合は、遺族が故人の生活用品を処分する際、見落として遺言書も一緒に処分されてしまう可能性があります。
当然ですが、発見されなければ遺言書は無かったものと見なされます。
③改ざんや偽造の恐れがある
遺族の手で遺言書が発見された場合、第一発見者によって自分に都合が良いように改ざんや偽造される恐れも否定できません。
特に、遺族以外の人に財産相続させる内容の遺言書であれば、その可能性はさらに高まるでしょう。
これらの危険に遭わないようするため、以降お伝えする遺言書の基本的なことを知っておきましょう。
遺言書には3種類ある
遺言書といえば手書きで自宅に保管されているイメージが強いと思いますが、実はそれ以外にも遺言書はあります。
ここでは代表的な3つの遺言書の種類をお伝えします。
①自筆証書遺言
遺言者自身が全文、日付、氏名を自筆で書いて、押印されているものが自筆証書遺言です。
ワープロや代筆のものは無効になります。最も多い遺言書の種類でしょう。
メリット
- ほとんど費用が掛からない
- いつでも新しい遺言書が書ける
- 遺言の内容を秘密にできる
デメリット
- 紛失、変造、隠匿(隠すこと)等の可能性がある
- 遺言書の要件を満たしていないと無効となる可能性がある
- 家庭裁判所での検認が必要になる
【検認とは】
相続人に遺言の存在とその内容を通知し、遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造や変造等を防ぐ手続です。
自筆証書遺言と後でお伝え予定の秘密証書遺言は、この検認を受けないとその遺言書は法的な要件を満たしたことになりません。
※遺言書の内容が有効か無効かを判断する手続きではありません。
さらに詳しい自筆証書遺言については、https://souzoku.asahi.com/でご確認ください。
公正証書遺言
まず公正証書とは、公証人が作成した文書のことです。
公証人とは、主に裁判官や検察官の退職者等、法律を専門とする地方法務局嘱託の公務員のことで、この公証人が作成した遺言書を公正証書遺言といいます。
メリット
- 公証役場で遺言書の原本は保管されますので、紛失・変造の心配がない
- 必ず要件を満たした遺言書になる
- 家庭裁判所での検認が不要になる
デメリット
- 証人2人以上ともに作成するので、遺言書の内容を秘密にできない
- 結構な費用と手間が掛かる。(およそ1~2万円)
- 必ず証人2人以上を準備しなければならない。
さらに詳しい公正証書遺言については、https://souzoku.asahi.com/でご確認ください。
秘密証書遺言
この秘密証書遺言はあまり知られていません。年間で全国約100人程度しかこの種類の遺言書を選択されていないようです。
しかし、どうしても遺言書の内容を秘密にした人には、大変有効な遺言書の種類です。
遺言書の書き方は遺言者自身が署名、押印していれば、ワープロや代筆でも構いません。
その遺言書を封筒に入れ封をした後に、証人2人以上を連れて公証役場に提出します。
そうすれば遺言書の内容は秘密だが、存在自体は証明されて秘密証書遺言となります。
メリット
- 公証役場に提出するので存在が証明され作成日も特定できる
- 遺言の内容を秘密にできる
デメリット
- 結構な費用と手間が掛かる(およそ1~2万円)
- 必ず証人2人以上を準備しなければならない
- 紛失、変造、隠匿(隠すこと)等の可能性がある
- 遺言書の要件を満たしていないと無効となる可能性がある
- 家庭裁判所での検認が必要になる
メリットよりもデメリットが多いので、どうしても遺言内容を秘密にしたい人以外は、不向きな遺言書の種類といえます。
さらに詳しい秘密証書遺言については、https://www.souzoku-mado.jp/でご確認ください。
遺言書種類の比較表
自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 | |
難易度 | 最もやさしい | 難しい | 少し難しい |
費用 | ほとんど掛からない | 16,000円~+証人依頼費用 | 11,000円~+証人依頼費用 |
保管 | 本人、推定相続人、遺言執行者、受遺者、友人など | 原本は公証役場、正本と写しは本人、推定相続人、受遺者、遺言執行者など | 本人、推定相続人、遺言執行者、受遺者、友人など |
秘密性 | 遺言の存在、内容共に秘密にできる | 遺言の存在、内容共に秘密にできない。証人から内容が漏れる可能性がある | 遺言の存在は秘密にできないが、遺言の内容は秘密にできる |
紛失/変造の可能性 | 共にある | 紛失の場合は再発行できる、変造の可能性はない。 | 共にある |
検認 | 必要 | 不要 | 必要 |
お勧め度 | ないよりまし | 特にお勧め | お勧めしません |
因みに、上記3つ以外の口頭やメール、ビデオDVDによる遺言は、法律上無効になります。
遺言書が有効になる正しい書き方
ここでは、自筆証書遺言を書く際に、その遺言書が有効にするためのポイント9つをお伝えします。
①遺言書のすべてを自筆で書く
遺言書のタイトル、本文、記述日付、名前など、遺言書すべてを遺言人自身で書かなければ、その遺言書は無効扱いになります。
遺言書は、必ずすべて自筆で書くようにしてください。
②最上部にタイトルとして遺言書と明記
遺言書にタイトルが無くても無効ではありません。
しかし、その書類が遺言書であることを明確にするためにもタイトルは、はっきりと「遺言書」と書くほうがいいでしょう。
③最下部に記述年月日を書き署名と押印
遺言書の最下部に、記述年月日・署名・押印は、必須です。記述年月日を書くときは×年×月×日とはっきりと書いてください。
×年×月吉日は無効扱いになります。押印は認印でも有効ですが、実印のほうがいいでしょう。
④消しゴム等で消せない筆記用具で書く
鉛筆や消えるボールペンで書くと内容を書き換われる恐れがあるので、消せないボールペンや万年筆、マジックなどで書くようにしましょう。
⑤相続財産は誰でも特定できるように書く
せっかく遺言書を書いても相続財産の特定があいまいだと、それが原因で遺族間で争いが起きることもあります。
相続財産は、誰にでも特定できるように書くことが重要です。
特に土地と建物の場合は、登記簿に記載されていることをそのまま書くことをおススメします。
⑥相続人は誰でも特定できるように書く
遺言書では、誰が読んでも人物を特定できるようにしておかないとトラブルの元になってしまう可能性があります。
相続人の記述方法は、氏名だけでなく遺言者との続柄や誕生日も書いておけば、誰にでも特定できるでしょう。
⑦相続割合はあいまいな表現で書かない
例えば、漠然と「妻に2分の1・長男に4分の1・次男に4分の1」等と記述した場合、もしも相続財産が土地と家しかない場合、3人で共有にするか家と土地を売って現金で分けてから相続することになります。
家や土地を共有にすると将来土地を売却する際、3人全員の同意が必要になり、いろいろな面倒や不都合が出てきます。
相続時にその家と土地を売って現金で分けた場合、家族3人が同居していれば新たに住居を探すことになります。余計な費用が掛かってしまいます。
このような状況にさせないためには「××は妻に・□□は長男に・○○は次男に」と相続させる財産を明示して書いたほうが得策といえます。
⑧遺言執行人を書く
遺言執行者とは、相続財産の管理や処分ができる能力を持ち遺言書の内容を執行することを許された人をいいます。
遺言書で遺言執行者を書くことにより、相続手続に不正が発生しにくくなり遺言内容に沿ってスムーズに相続が進みやすくなります。
因みに、遺言執行者は遺言書に記述する方法でしか指定することはできません。
⑨書き終えたら封筒に入れて封印をする
書き終えた遺言書は、改ざんや不正を防ぐためにも封筒に入れて封印するようにしておくといいでしょう。
その際封印する印鑑は、遺言書に押印した印鑑と同じものがよりいいでしょう。
【まとめ】遺言書の書き方
上記条件を満たしていない遺言書は、無効になる可能性があります。
最悪の場合は、あなたの意思が全く反映されなくなり、法定割合による遺産相続になってしまうので注意しましょう。
また無効にならなくても、遺族間でのトラブルの元になることもあり、それはあなたも不本意ですよね。
なるべく遺言書は、上記を参考にして正しい書き方をしましょう。
遺言書の具体的な探し方
ここでは、代表的な2通りの遺言書の探し方を具体的にお伝えしますね。
公正証書遺言の場合
公証役場で作成された公正証書遺言の各内容(遺言内容は除く。)は、日本公証人連合会に登録されています。
よって、最寄りの公証役場に行けば公正証書遺言の有無を調べることができます。これを遺言検索システムといいます。
この遺言検索の手続きは、相続人またはその代理人しかすることはできません。
その際に、それぞれ必要な書類は異なりますので、https://www.tokyoyokohama-souzoku.net/で、確認してから公証役場に行き、手続きをしましょう。
自筆証書遺言と秘密証書遺言の場合
公正証書遺言のように便利な捜索方法はありません。自宅や病院、老人施設などを地道に探すしかありません。
仏壇や神棚、押入れ、引き出しなど大切な物が入っていそうな箇所を重点的に整理しながら探すと、効率よく遺言書を探し出すことができます。
また貸金庫や別荘があれば、そちらも忘れずに念入りに探してみましょう。
遺言書を発見した時の対処法
ここでは、遺言書を発見したときに絶対に気を付けて欲しいことを中心にその対処方法をお伝えします。
まずはキチンと保管する
汚したり、破損したり、紛失しないように、できれば金庫などの保管場所がいいでしょう。
それと同時に、他の相続人にも遺言書を発見したことを知らせましょう。
知らせていないと最悪の場合、それが原因であなた自身が相続人の資格を剥奪されることもあります。
開封しないこと
封印されている遺言書は、すぐに開封してはいけません。
開封してもその遺言書は無効にはならないが、開封したら5万円以下の過料に処せられることがあります。
遺言書は開封しないで、そのまま家庭裁判所で検認の手続きをしましょう。
家庭裁判所で検認手続き後に開封
検認手続きから約1ヶ月経過した頃に家庭裁判所で開封手続きがあります。全員の相続人の前で遺言書を開封します。
相続手続きの開始
遺言書の有効性が認められれば、その内容に沿って、具体的な財産の相続手続きが開始されます。
遺留分は遺言書よりも優先される
相続財産は故人が築かれた財産なので、故人の意思である遺言書を一番に優先すべきという考え方があります。
しかし、もしも財産のすべてを赤の他人に譲るという遺言者だったら、故人の財産に寄与して生活していた遺族が路頭に迷うことにもなりかねません。
そこで、民法では遺留分として法定相続人には、遺言書よりも優先して相続できる財産割合が認められています。
遺留分については、http://iryuubun.com/で詳しく説明されていますので、ご覧ください。
遺言書に関する代表的な3つの質問
この項目では、巷でよく聞かれる遺言書に関する代表的な3つの質問をお伝えします。
遺言書に時効はありますか?
【回答】遺言は、原則として遺言者が死亡した時に効力が発生し、効力発生後に遺言の効力が時効によって消滅することはありません。
さらに詳しい回答は、http://www.shakyo-miura.com/ をご覧ください。
矛盾する遺言書が2通発見されたらどうなるの?
【回答】遺言は、作成した本人が生きているうち(遺言能力があるうち)は、何度でも作成し直すことができます。
そして本人の死後に、内容の矛盾する遺言が複数発見された場合には、最も新しい(死亡日に近い)遺言が優先されます。
さらに詳しい回答は、http://mbp-ishikawa.com/ をご覧ください。
遺言書の内容を変更はどうすればいいの?
【回答】遺言の内容は、いつでも何度でも変更したり取り消すことができます。
また遺言書の一部だけを変更したり取り消すこともできます。
さらに詳しい回答は、https://vs-group.jp/sozokuzei/ をご覧ください。
その他の質問は専門家にお尋ね下さい
その他、私の場合はこの遺言書でどうなるの?などの個別の質問は、下記専門家等にお尋ねください。
サイト名 | 税理士法人チェスター |
電話番号 | 0120-390-203 |
所在地 | 東京都中央区日本橋室町3-4-7 10階 |
サイト名 | ベリーベスト法律事務所 |
電話番号 | 0120-666-694 |
所在地 | 東京都港区六本木一丁目8番7号 11階 |
サイト名 | 井川真理子整理士事務所 |
電話番号 | 06-6940-7395 |
所在地 | 大阪市北区茶屋町8-21 507号 |
まとめ
基本的な遺言書とその正しい書き方、遺言書を発見したときの対処方法をお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか。
あくまでも遺言書の基本的なことしか承知していないので、個々の具体的な疑問や相談は、遺産相続の専門家にお願いいたします。