エンバーミングとは|その基本的な処置手順と役割等について

親がかなり高齢なため、葬儀についてネットで情報収集をしていたら、エンバーミングという言葉を見つけて、これって何なんだろうか?と興味を持たれているのではありませんか。

というわけで、このページでは、エンバーミングの概要とその基本的な処置手順、役割などをお伝えします。

エンバーミングとは

故人を生前の健康だった頃の容姿に戻すための科学的・医学的な処置をエンバーミングといいます。日本語では遺体衛生保全などと訳されます。

その専門技術を持ったエンバーマーと言われる人が全身を殺菌消毒し、血液を抜いて防腐剤を注入、傷を縫合し、大きな欠損部は補うのがエンバーミングです。

1865年の米国の南北戦争のときに、戦死者を遠く故郷に運ぶ際に、その必要性から普及しはじめました。

今現在米国では90%以上の遺体にエンバーミングが施されているとみられています。一方日本では、まだ1%程度の普及率です。

基本的なエンバーミングの処置手順

この項目では、日本で行なわれている基本的なエンバーミングの処置手順をお伝えします。

ただし遺体の状態は個々で異なるので、専門技術者であるエンバーマーの判断で、手順方法、使用する薬剤とその配合を変えて処置することもあります。

① 脱衣

服を脱がせ、全身を確認し、損傷部位がないかを調べます。

同時に包帯やガーゼ等も取り除きます、そして着衣を取った後は局部を布等で被います。

② 消毒と洗浄

全身をスプレーで体表に付着している微生物や細菌を消毒殺菌や洗浄し、洗髪を行ないます。

③ 鼻腔や口腔などの殺菌、洗浄

鼻腔や口腔、その他の体腔内にすでに脱脂綿等詰められている場合は取り除き、消毒薬とコットンを用いて慎重に殺菌洗浄を行います。

④ 顔の処置

口を縫合して、閉じて形を整え、目にはアイキャップを挿入し、目の形を整えるなどして顔を整えます。

男性の場合は、必要に応じて髭剃りをします。

⑤ 切開を行なう

皮膚を小さく切開し、体表近くの動脈と静脈を確認します。

⑥ 注入管と排出管を血管と繋ぐ

動脈にはエンバーミングマシーンからの注入管を繋ぎ、静脈には排出管を繋ぎます。

⑦ 血管への防腐溶液注入と血液の排出

動脈より防腐溶液の注入を開始します。同時に静脈よりし血液の排泄を開始します。

⑧ 血管への防腐固定液の注入

メチルアルコール、ホルマリンなどの防腐固定液を全身に行き渡らせるため、マッサージをしながら注入します。

この防腐固定液には色素などが配合され、遺体の表情に赤みを与えます。

⑨ 体腔への防腐液の注入

体腔の一部を小さく切開し、内容物を排出し、防腐液を注入します。

体腔とは、体の内部にある空洞のことで、主に胸部や腹部に多くあります。

⑩ 切開部の縫合

腐敗液注入のために切開した部分やその他手術の痕等の縫合を行います。

漏れ等が生じない様、細かく丁寧に縫合していきます。

⑪ 全身の洗浄

様々な箇所を細部に渡って確認しながら、再び殺菌用洗剤で全身の洗浄をします。

⑫ 修復

修復を必要とする部位があれば修復します。

⑬ 着衣

ご遺族よりお預かりした故人の着物や洋服を着せていきます。

⑭ 化粧

遺族の要望や生前写真を参考に、その方に合った化粧を施し自然なお顔に整えます。

エンバーミングには3つの役割がある

近年、なぜエンバーミングが注目されているのかは、以下の3つの役割があるためと思われます。

【役割①】腐敗防止

ご遺体は、死後すぐに体内から腐敗が進むので、エンバーミング処置を施すことにより、腐敗がほとんど進まず、臭いもほとんど感じられなくなります。

どうしても臨終から火葬までの時間が掛かってしまう場合には、エンバーミングが大変有効です。

【役割②】消毒・殺菌

エンバーミング処置を施せば、遺体に感染症の原因となる病原菌やウイルスがある場合はもちろんですが、その他危険な感染も防ぐことができます。

他の処置方法よりも公衆衛生に非常に優れています。

【役割③】修復・化粧

特に、交通事故の損傷や長い闘病生活での衰弱が激しい場合は、エンバーミングを施すことで、まるで安らかに眠っているかのような容姿になり、故人の尊厳が守られます。

エンバーミングの主な利用目的

この項目では、日本と海外でのエンバーミングの利用目的とその違いについてお伝えしています。

日本では長期保全

実際にエンバーミング処理を行なう目的の多くは、どうしても葬儀まで日数が掛かってしまう場合に限られているようです。

ドライアイスだけでは、通常遺体は3日~4日で腐敗がはじまり臭いも出ます。

しかしエンバーミングを施せば10日~2週間程度は腐敗することはありません。

長期保全が主な目的であるため、日本ではエンバーミングの普及率は1%程度に留まっているようです。

欧米では遺体処置

欧米では、湯灌やエンゼルケア、死化粧のように一般的な遺体処置方法としてエンバーミングが選ばれています。

そのため、北米での普及率は90%以上あり、北欧や英国でも約70%あると言われています。

エンバーミングにはエンバーマー資格と専用施設が必要

実際にエンバーミング処置を行なうには、専門的な知識と技術が必要になるため、エンバーマーという資格の取得と、それに必要な設備、施設を揃える必要があります。

エンバーマー資格

日本では、エンバーマー資格は、主に一般社団法人日本遺体衛生保全協会(IFSA)による認定を受けたエンバーマー養成校で取得することができます。

募集要項

受講期間と
募集人員
修業年限:2年(昼間)
募集人員:エンバーマーコース20名
入学資格 以下のいずれかに該当する者
①高等学校卒業(平成27年3月卒業見込を含む)、または、これに準ずる学校を卒業した者
②外国において、学校教育における12年の課程を修了した者
③文学科学大臣の指定した者
④文学科学大臣の行う高校卒業程度認定試験または、大学入学資格検定に合格した者
学費 1年目納付金 合計98万5千円
・入学金:15万円
・授業料:48万円(年額)
・実習費:20万円(年額)
・施設費:15万円(年額)
・維持費:5千円(年額)2年目納付金 合計83万5千円
・授業料:48万円(年額)
・実習費:20万円(年額)
・施設費:15万円(年額)
・維持費:5千円(年額)【別途費用】
1年次:48万円
2年次:10万円
※上記金額には教科書代、制服代などが含まれています。
※平成26年実績のため、変更する場合もあります。
提出書類 学願書(所定のもの)
調査書又は最終学校の卒業証明書
写真一葉(願書貼付)
身上書
入学検定料2万円
※入学検定料は郵便振替にて同封してください。
入学方法 【入学試験、面接】
試験科目:一般常識・作文・面接【開校日】
学校法人鶴嶺学園 毎年4月(11月には説明会が開催される予定です。詳しくは養成校にお問い合わせ下さい。)
奨学金・教育ローン 独立行政法人 日本学生支援機構(旧 日本育英会)、日本政策金融公庫、中央労働金庫
その他 養成校の卒業後は「IFSA認定」のエンバーマー受験資格を得ることができます。
資格取得はIFSAによる資格認定試験に合格する必要があります。
(3月の予定で年に1回試験)
IFSA認定資格は日本国内の当協会加盟企業のエンバーミングセンターで就職する場合のみ、有効・必要です。
養成校の卒業をもって就職が保証されるものではありません。
その他、詳しい内容については下記の養成校に直接お問い合わせください。

さらに詳しいことは、http://www.embalming.jp/をご覧ください。

専用施設

実際には、どうしても専用のエンバーミング処置室と機器が必要になります。

一般社団法人日本遺体衛生保全協会(IFSA)では、自主基準を作成して厚生労働省や環境省へエンバーミング施設の届け出ることを取り決めています。

また血液などの廃液処理には、環境基準を遵守し、地方自治体の環境課への届出義務もあります。

このようにエンバーミングには、初期費用が多額に掛かるため、小規模の葬儀会社等が直接行なうことはほとんどありません。

そのため、ほとんどの葬儀会社ではエンバーミング業者への仲介を行なっています。

反対に大手葬儀会社の一部では、エンバーマーを雇い、施設を整えて直接エンバーミングを行なっているところもあります。

エンバーマーが在籍している葬儀会社

サイト名 さがみ典礼
電話番号 0120-813-310
所在地 埼玉県さいたま市見沼区上山口新田53-1
サイト名 株式会社セルモ
電話番号 0120-525-024
所在地 熊本県熊本市中央区世安町155番地
サイト名 株式会社タルイ
電話番号 0120-365-365
所在地 兵庫県明石市林崎町2-3-2
サイト名 公益社
電話番号 0120-948-341
所在地 東京都港区南青山1-1-1 新青山ビル西館14F

エンバーミング処置の費用目安

ここでは、エンバーミング処置に掛かる一般的な費用目安をお伝えしています。

因みに、ドライアイス処置の費用目安は、1体あたり8千円~1万2千円/1日です。

エンバーミング処置 150,000円~250,000円/1体
遺体搬送 50,000円~100,000円
合計費用 200,000円~350,000円/1体
  • 健康保険の対象外です
  • 搬送費用は、亡くなった病院や自宅からエンバーミング施設までの往復分です
  • 有効日数は、10日~14日程度です

まとめ

今日は、エンバーミングの概要とその基本的な処置手順、役割等の基礎的なことをお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか。

エンバーマーになりたい人は、一般社団法人 日本遺体衛生保全協会(IFSA)の門を叩いてみてください。

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